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23歳マルケスが会得した「我慢」。
3度目のMotoGP制覇で、さらに先へ。
posted2016/12/01 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
マルケスが2年ぶり、3回目のチャンピオンに輝いた。125cc、Moto2クラスを含めると5回目のタイトル獲得になった。
今年は18戦を終えて5勝を含む計12回の表彰台に立った。最高峰クラスで初タイトルを獲得した'13年の6勝16回、'14年の13勝14回(ともにシーズン18戦)に比べると勝ち星も表彰台に立った回数も少ない。その背景には、'16年はシーズン最多優勝者記録樹立となる9人のウイナーが誕生する“乱戦”のシーズンだったことがある。
“乱戦”になった理由は、3つ。シーズンを通じて雨の多い不安定な天候だった。タイヤがブリヂストンからミシュランに代わった。バイクのパフォーマンスに大きな影響があるエンジン・コントロール・ユニット(ECU)のソフトウエアが共通になった点だ。
これらの要因が各レーサーに影響したことは間違いなく、過去最多の転倒者数を記録するシーズンとなった。優勝者も、マルケス5勝、ロレンソ4勝、ロッシとクラッチローが2勝、ミラー、イアンノーネ、ビニャーレス、ペドロサ、ドビツィオーゾがそれぞれ1勝。不安定な天候の中でタイヤ選択が勝敗を分けるレースも多かった。
「100%プッシュ」から我慢の走りを覚えたマルケス。
そのシーズンの中で、これまでグランプリの記録を次々にブレイクしてきた23歳のマルケスは、MotoGPクラスではシーズンを通じて3番目となる17回の転倒を記録するなど苦しんだ。それでも決勝では我慢のレースを続け、着実に表彰台に立ち続ける。そして、第15戦日本GPで5勝目を挙げてタイトル争いに決着をつけた。
タイトルを獲得したマルケスは、厳しいシーズンをこう振り返る。
「これまでは常に100%。プッシュ、プッシュの走りだったが、今年は我慢することを覚えた。それがタイトル獲得につながった」