マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
“黒田の後”を託された慶應ボーイ。
広島1位・加藤拓也は相当いいぞ。
posted2016/11/25 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
早慶戦の日だというのに、神宮の森は第2球場のほうが盛り上がっているのはどうしたわけか。
秋季高校野球・東京都大会。その準々決勝だという。
ああ、清宮幸太郎の早実が試合をしているんだな……。そう思ったら、早稲田実業の試合は、場所が八王子だという。
清宮幸太郎が出ていないのに、これほどの盛り上がり。清宮のいない球場に、ファンは清宮幸太郎を見にやって来ている。ファンは彼の匂いをかぎにやって来ているのだ。
ひるがえって、神宮球場の早慶戦の観衆は2万人と伝えられた。
もちろん、この秋のリーグ戦では最も観衆を呼んだ試合ではあったが、かつての「徹夜組数千」、「月曜でも満員御礼」の盛況にはほど遠く、スタンドには空席が目立った。
最後の“慶早戦”、マウンドにはエース加藤が。
東京六大学にかつての盛り上がりを。
連盟をあげて取り組んでいるこの命題。神宮第2球場の喚声がこちらまで聞こえてくるたびに、この喚声の中に、そのヒントが潜んでいるような気がしてしかたがなかった。
隣りの盛り上がりにやや圧倒されるように始まった早慶1回戦を、キリッと引き締まった展開の学生野球らしい一戦にグレードアップしてくれたのが、慶應義塾大のエース・加藤拓也の奮投だ。
10日前のドラフトで広島東洋カープの「1位」に指名されていた。
最後の早慶戦、いや、慶應ボーイの彼にとっては、最後の“慶早戦”である。
1年生の頃からブンブン腕を振ってきた神宮のマウンドで、もしかしたら最後の奮投にもなるかもしれない一戦である。