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浦和でDF、代表では中盤の葛藤。
遠藤航が磨く「前で奪う」センス。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byAFLO
posted2016/11/25 11:30
ルヴァン杯決勝ではPK戦で5人目のキッカーを務めるなど、遠藤には守備者のスキルだけでなく、ハートの強さがある。
浦和では3バックのリベロ、代表は中盤という葛藤。
“デュエル”というワードが流行語のようになっている中で、遠藤は今季の浦和で、AFCチャンピオンズリーグで対戦した広州恒大(中国)とのゲームでその力を証明した。コロンビア代表FWジャクソン・マルティネスやブラジル代表で32試合出場のMFパウリーニョを相手に一歩も引かない、互角以上の戦いを見せてきたのだ。
特に地上戦での強さはJリーグではトップクラスであり、守備力という意味では日本代表のボランチに求められるハードルをクリアするのに十分なものを持っている。
しかし、遠藤がその守備力を浦和のゲームでアピールできるのは、最終ラインでプレーしているという理由が大きいことも事実だろう。本人も、ボランチとしてのアピール機会が限られていることが日本代表入りに向けては必ずしも有益でないことは認めている。
「ポジションが普段はボランチではないので、アピールの場がボランチとして全然ないからこそ、また代表に入っていくことの難しさはあると思いますね。今までもそうだったんですけど、オリンピックが終わったからこそボランチでやる機会はレッズでしかない。それは難しいところです。ボランチでプレーする機会がこのチームでも増えれば一番いいのかもしれないですけど、それは(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督が決めることなので」
前向きに守備ができれば、後ろも押し上げられる。
遠藤が浦和でボランチとしてプレーしたのは、直近では10月9日のルヴァン杯準決勝第2戦のFC東京戦でフル出場したゲームまでさかのぼる。MF青木拓矢と並び、後方に普段はポジションを争うDF那須大亮が入る形で戦い3-1で勝利したゲームだ。この時にコンビを組んだ青木は「横にいてバランスを取りやすく、やりやすかった」と話し、那須も「後ろから見ていて『良いな』と思った」と話した。
この時、ボランチ遠藤が意識していたのは「前向きに守備をすること」と、前線の選手の守備負担を軽減することだった。
「自分のところが前向きに守備をするからこそ、後ろの選手たちも押し上げられる。しっかりと運動量を出せれば、自分が持つ相手を潰す良さが出せますからね。(中島)翔哉のところに李(忠成)選手が下がり過ぎずに済むようにすることは意識していました」