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<リオパラリンピックを振り返る>
山田拓朗「貪欲なメダリスト」
posted2016/11/18 12:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
4度目の大舞台で、手に入れたメダル。だが、胸中に感じたのは、達成感より次への渇望だった。
「結構重いですね。単純に重さもそうだし、12年の重みがつまっているなと」
あの日、ついに手にしたメダルに、そう口にするのも無理はなかった。
9月13日、リオデジャネイロ・パラリンピック競泳男子50m自由形(S9)で、山田拓朗は銅メダルを獲得した。
決勝のリアクションタイムは0秒67。8人中最速で飛び込むと、快調に飛ばし、先頭争いを続ける。
激しいレースは、瞬く間に決着を迎える。
タッチ。電光掲示板に表示されたのは26秒00。トップが25秒95、2位が25秒99。銅メダルをつかんだ瞬間だった。目標に掲げていた金メダルではなかったが、長い年月をかけて手にしたメダルは、重かった。
「金メダルを獲らなくてよかったと思います」の真意。
あれからひと月余り、山田はこう語る。
「金メダルを獲らなくてよかったと思います」
そこには、リオで達成できなかった思いと、今後への思いが込められていた。
山田にとって、リオは4度目のパラリンピックだった。初出場は2004年のアテネ。続く北京は100m自由形で5位、ロンドンでは50m自由形で4位。階段を上るように進んできた。
今までの悔しさを晴らす舞台であるリオ。だが、メダルへの道は簡単ではなかった。
山田は400m自由形を経て2種目めの100m自由形に臨む。50mに次いで強みを持つ種目だ。仕上がりはよかったと言う。
「レースが始まるまでの段階では、100mの方が調子よかった。間違いなく自己ベストが出るだろう、メダルも狙いたいなと思っていました」