フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
宇野昌磨、フリーで初めて4回転3本!
スケートアメリカで優勝した舞台裏。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2016/10/25 17:15
フリーでは、世界でただ1人だけが跳べる4回転フリップを軸に、初めて4回転ジャンプを3回も決めた宇野。
宇野、迫力のタンゴを演じる。
フリーは、ジャパン・オープンで既に披露したアストル・ピアソラのタンゴメドレーである。SPとはうってかわり、最初から張りつめた凛々しい表情でポーズをとった。
直前の6分間ウォームアップの最中、一度も4フリップはきまらなかったが、本番ではまるで3回転ジャンプのようにきれいに着氷。ピアソラのドラマチックなタンゴのビートを切れ味良く体全体で表現しながら、4トウループ、3ループと、ジャンプを着実に降りていった。
音楽が静かになった瞬間にイーグルからの3アクセル+3トウループをすぱりときめ、そこから曲はボーカル入り『ロコへのバラード』に変わった。
公式練習では少しヴォーカルの声が耳についたが、本番では宇野の演技の迫力によく合って気にならなかった。
宇野は、惜しくも一度だけの転倒で苦笑い。
ステップからの4+2トウループも成功し、このまま最後までノーミスでいくかと会場は熱く盛り上がっていった。
だが2度目の3アクセルで転倒。持ち直して3サルコウを跳び、カウンティリーバーと呼ばれる足をイーグルのように開いて膝を曲げ、上半身を後ろに倒す技でリンクを横切ると、コンビネーションスピンで締めくくった。
演技が終わると、両手を頭の後ろに当ててちょっと舌を出し、嬉しさと悔しさが混ざったような苦笑いを見せた。
「最初のほうジャンプの質もよくうまくいっていたので、ノーミスを意識してしまったのか、思い切りいけなかったのが原因で(トリプル)アクセルをミスしてしまった。でも6分間調子悪くて試合であわせられたのは、良かったと思います」
190.19と、フリーも高得点で総合得点で自己ベストスコアを更新(フリーのベストは昨季GPファイナルの190.32だった)。総合279.34でトップを保ち、初のスケートアメリカタイトルを手にした。
「シニアになってはじめて、他の選手の失敗ではなく、自分で成功した結果1位になれたのがすごい嬉しかったです。去年の経験だったり、悔しい思いをした1年前のすべてが今の自分につながっているなとすごく感じています」