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権田修一がホルンで出会った“師”。
GKはセーブじゃなくてアタック!?
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2016/09/30 16:30
ハリルホジッチは、欧州のマイナーなリーグの選手にも目配せをしている。きっと権田のことも見ているに違いない。
セーブするのではなくて、ボールにアタックする。
GKは数多くいるフィールドプレーヤーとは違い、より専門性の高いポジションである。だからこそ、一見するだけでは選手の実力差や技術的な差異が見抜きにくい。長身、大柄な選手に優位性があるのは間違いないだろうが、それだけで全てが物語られるほど単純な存在でもない。
権田が、ペコヴィッチに特に強く指摘されること。それは、日本のGKにとっては標準ではなく、強豪国のGKにとってはスタンダードなプレーだった。
「もっとボールに、シュートに速く行けと言われます。ボールをセーブするのではなくて、『ボールに対してアタックする』という感覚です。これは僕がこれまでお世話になったマウリ(グイード)やフルゴーニといったイタリア人コーチからも言われてきたことです。
ペオも僕のプレーを見て、『今までそういう指導を受けてきたからか、お前にはその感覚は多少ある』と言われましたが、『ただアタックするぐらいなのだから、もっともっとスピードと勢いがないといけない。そうでないとシュートに遅れるし、ボールに対して(遠くに飛ばすための)力が伝わらない』と指摘されています。これが、結構難しくて。
なんだろう、素早くかつ強くなんです。音で言うと、バシッ! ではなくビュン! と動く感じで(笑)。とにかく飛んできたボールへの到達時間を早くすることですね。
やっぱり、僕も含めて日本人のGKはその感覚が足りない。Jリーグの試合を見ていても、なかなかそういうプレーをしているGKはいないと思う。どこか、ボールを待っているGKが多いと感じます」
「お前が日本代表に復帰して、ユニフォームをくれ」
直接的な指導だけに留まらない。ペコヴィッチは権田にあらゆる手段で、トップレベルの技術を授けようとする。
「この前はハンダノビッチが実際にスロベニア代表でやっている練習メニューを映像で見せてくれました。僕はそれだけじゃ物足りず、実際にミラノまでインテル対ボローニャの試合を観に行ってきました。試合前のアップの動きから試合まで、ハンダノビッチのプレーをいつも自分が受けている指導のイメージを持ちながら見ることができた。そして彼はそのイメージ通りのプレーをするんです。今日はこのあとアトレティコ・マドリー対バイエルンのチャンピオンズリーグの試合(9月28日)があるから、テレビだけどオブラクのプレーも見ます。
ハンダノビッチとオブラクは、ペオの指導を直接受けているGKなので、僕にとってもダイレクトに参考になる選手。ペオはいつもこう話しています。『例えばハンダノビッチは体のサイズが大きい。オブラクはゴンダと身長がそれほど変わらないけど、手が他人より長くて、ユース時代に毎日25kmの距離を自転車で通っていたので足腰がものすごく強い。それぞれ彼らには武器がある。ただ、だからといって超えられない存在ではない』と。というのも、彼自身も身長は大きくないし、身体能力もそれほど高くはなかったみたいです。それでも努力と工夫でボスニア・ヘルツェゴビナ代表になった。そこまで行けた自信がある。この前、ペオが僕にオブラクから代表ユニフォームをもらってきてくれた。その時に『だから今度はお前が絶対に日本代表に復帰して、そのユニフォームを俺にくれ』と言われたんです」