MLB東奔西走BACK NUMBER
岩隈との交渉決裂が逆に良かった!?
弱小アスレチックスの巧妙な補強術。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKYODO
posted2011/01/26 10:30
ポスティング制度での交渉が決裂した岩隈は、昨年末楽天と年俸3億円+出来高で契約更改を終えた
2月14日から投手・捕手のトレーニングキャンプが解禁(メジャーの場合投手と捕手が野手より先にキャンプインする)となり、いよいよメジャーリーグの2011年シーズン幕開けも秒読み段階に入った。
ほとんどの大物FA選手の移籍先が決まったとはいえ、未だに選手の獲得報道が続いており、例年以上にストーブリーグが停滞しているのが今年の特徴だろう。
そんなオフシーズンの間に、善きにつけ悪しきにつけ日本で話題となったのがアスレチックスだ。岩隈久志、松井秀喜両選手の獲得に動き、松井とのみ契約合意に至ったチームである。
ポスティング制度を利用した選手としては初めて交渉決裂となった岩隈とアスレチックスとの間に、微妙なわだかまりが残ってしまったのは非常に残念なことだった。
だがこのオフシーズンの補強対策をじっくり検証すればするほど、今シーズンに期すアスレチックスの本気度がありありと窺えるのである。
メジャーでも有名な超低予算チーム(2010年、年俸総額は30チーム中28位)だけに大物選手の獲得は不可能に近かったのだが、攻撃力とリリーフ投手という補強ポイントに見合った良質な選手を次々に獲得しているように見える。
ポスティングで見せたイメージとは違う、堅実なチーム補強。
まず攻撃力に関してだが、松井の他に過去2年間ナショナルズで計40本塁打を放っているジョシュ・ウィリンハムと、ロイヤルズでの8年間で通算打率.289のデービッド・デヘススの2人の外野手の獲得に成功。両選手ともにレギュラーとして早速期待されている。松井とウィリンハムの獲得によって懸案だった長打力をアップし、さらにデヘススという堅実な打撃を加えているのである。
リリーフ投手についても、この数日間で実績あるベテラン2投手との契約にまでこぎ着けている。
グラント・バルフォアは、ここ数年レイズの中継ぎ陣の中心だった右の本格派であり、ブライアン・フエンテスもロッキーズ等でクローザーとして活躍した横手左腕だ。昨シーズンのチーム防御率は3.56とリーグ1位だったものの、リリーフ投手に限っては3.83とリーグ6位に留まり、先発投手陣に負担がかかっていた。2投手の加入は、そんなリリーフ陣の戦力を大幅に底上げすることになるだろう。