パラリンピックPRESSBACK NUMBER
パラ開会式、転倒さえも印象的に。
式のコンセプトは「限界のない心」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2016/09/08 17:00
ロボットとのダンスを披露した冬季パラリンピックのメダリスト、エイミー・パーディー。ブラジルの先進的な挑戦が表れている。
サッカーをしたいと願う我が子にブーツを作った父。
大会の前、不安なニュースが数多く流れた。8月下旬の時点では、販売されていたパラリンピックのチケット約250万枚のうち、12%しか売れていないことが明らかになった。登録されていた大会ボランティアも辞退者が続出し、いくつかの関連施設の運営を取りやめる話も出た。
だが、開幕が近づくにつれチケットの売り上げは急上昇し、開幕前には6割ほどが売れたという。急激な関心の高まりは、大会前の懸命の告知活動の成果だっただろう。それもまた、挑戦の第一歩かもしれない。
開会式の後半。親と子が一緒に2足のブーツを履き、サッカーを楽しむ映像が流れた。障がいを持ちながらもサッカーをしたいと願う我が子のために父が開発したもので、その後、広がりを見せているという。
映像の直後、パラリンピック旗の入場を担ったのは、そのブーツを履く親子たちだった。ハーネスなどを利用して脳性まひの子と一緒に歩く道具は日本でも用いられているが、「我が子にもサッカーを」という思いから誕生したブーツとその映像、そしてパラリンピック旗を一歩一歩、ゆっくりと、しっかりとした歩みで運ぶ姿もまた、ブラジルの今大会の挑戦を示しているようだった。
階段がスロープに変化した演出。
大粒の雨が落ち始めた中、聖火がスタジアムに登場する。
3つの金メダルを獲得した陸上のアントニオ・デルフィノから、やはり陸上で金2、銅2のメダルを獲得したマルシア・マルサルへ。雨の影響か、転倒してトーチを落としたが、観客がスタンディングで声援を送る。スタッフの助けを借りて立ち上がると、計13のメダルを獲得した陸上のアンドリア・ホッシャを経て、今大会にも出場する水泳のクロドアウド・シルバに聖火が渡る。
シルバが車いすでステージの前へ到達すると、階段がスロープへと変化する。雨が激しくなる中、スロープを登りきる。
アクシデントがあっても、雨に見舞われても、懸命につながれた聖火から、聖火台に火が灯された。
さまざまなシーンに、思いが伝わってきた大会は18日まで続く。選手たちの挑戦が始まる。