サムライブルーの原材料BACK NUMBER
清武弘嗣が獲得した信頼の大きさ。
「外国人選手」にとって開幕戦とは。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2016/08/24 11:30
ブンデスリーガの下位クラブから、CL出場クラブへ。大幅なステップアップにもかかわらず、清武弘嗣の存在感は全く衰えていない。
安永「バスケスと空間の使い方など感性が近い」
今から20年近く前、安永はのちにセビージャを強豪に仕立て上げるファンデ・ラモスのもと、セグンダA(2部)のレリダで1年間、プレーしている。リーガ・エスパニョーラで最初にプレーした日本人選手であり、引退後も日本きっての“スペイン通”としても知られている。
その安永の目に、清武のパフォーマンスがどう映っていたのか聞いておきたかった。彼は「大きなアドバンテージを得たと思う」とチーム内の激しい生存競争で一歩リードしたことを強調した。
「清武は今季のセビージャで攻撃の中心になるであろうバスケスと空間の使い方を含めて感性が凄く近いと感じました。バスケスがすっと引くと、清武がサイドから中央のポジションを取っていたのが印象的でしたね。息の合ったプレーというか、日ごろから信頼関係を築いているからあそこでバスケスからいいパスが出てきたんだと思いますよ」
清武は右インサイドハーフに位置し、パスとランで潤滑油となった。トップ下を務めるバスケスとの「信頼関係」は後半9分のプレーにも表れている。左サイドからマイナスに送られたパスに対してニアに入ってきた清武がスルーし、バスケスのゴールを演出している。
試合中に味方の信頼を得たことがゴールにもつながった。
安永自身もレリダ時代、開幕から7戦目で2ゴールを奪い、味方の信頼を勝ち得た経験がある。最初が肝心であることは身をもって経験してきた。
「結局のところ結果を出さないと誰も認めてくれない。自分というものを確立していくためにも、周りから評価してもらうためにも、最初に何を起こせるかというのは大切になってくる。結果を出すことができれば心にゆとりが出てくるし、圧迫感みたいなものがなくなってプレーにもいい影響が出てくると思いますよ」
お互いを認め合うからこその信頼関係。いきなり信頼を損なう怖れもあるなかで、清武は開幕戦をバスケスや味方との関係を深め合った90分間にした。それが最後に清武のゴールへとつながったとも言える。