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オカダ・カズチカ、G1で連敗中――。
乱れ始めた精密ルーティーンの謎。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2016/08/10 11:00
IWGPベビー級王者が在位中にG1タイトルを獲得する史上3人目となる偉業を目指すオカダ。
1試合で6発もドロップキックを放った末に……。
G1クライマックスに話を戻すと、オカダは2012年、2014年と偶数年に優勝している。この流れだと、今回の2016年はついにIWGP王者のまま優勝だと思っていた。
ところが。
8月6日、大阪府立体育会館。
今ではエディオンアリーナ大阪というもう1つの名称も持っているが、前述のようにオカダにとっては忘れられない場所だ。
それがどうだろう。
石井智宏を相手に、オカダはいつものように、そのルーティーンに近い動きで決め技レインメイカーまで持っていくはずだった。ところが、通常のドロップキック、コーナーへのドロップキックに加えて、オプションで背後からのドロップキック、天龍戦や内藤戦で見せた低空ドロップキックを3発、となんと1試合で6発もドロップキックを放った。
それなのに……石井にカウンター気味に浴びたドロップキックに珍しく動揺したのだろうか? それとも頭突きのダメージがオカダを狂わしたのか?
レインメイカーは、空を切った。
オカダが外道と決別する時が近いのかもしれない。
ゲーム機の中のファイターのように、黙々と機械的に感情を出さずに戦ってきたオカダだが、そこに感情が移入されたように見えた。日常生活に別の変化が起きたのかもしれないし、他の要因なのかもしれない。でも、そんな感情が精密機械のように規則正しかったオカダのルーティーンに明らかな「ズレ」を生じさせた。
セコンドの外道が「カモン。レインメイカー、カモーン!」とエプロンを強く叩いても、あのポール・ベアラーの妖気を帯びたツボのような効果はなく、オカダがジ・アンダーテイカーのようにスーッと起き上がることはなかった。
外道は売り出し中のオカダには参謀として確かに有効だった。だが、安定した王者の時代に入ると、外道には悪いが、今はプラスの要素が感じられない。もしかしたら、オカダが外道と決別するときが、近づいているのかもしれない。