猛牛のささやきBACK NUMBER
比嘉幹貴「後から謝ればいいやー」
オリの頼れる男は、開き直りが凄い。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/08/04 11:00
かつて岡田彰布元監督から「日本一うまい」と言われたけん制も、比嘉幹貴の大きな武器である。
ピンチで上がるマウンドは「開き直ってます」。
「あいつのいいところは、とにかく度胸があるところ」
小林宏投手コーチは頼もしそうにこう話す。
基本的に比嘉が投入されるのは、ランナーを背負ったピンチの場面。しかしどんな時にも表情を変えることなくひょうひょうと、サイドスローの独特のフォームから小気味よく投げ込みチームの危機を救う。
ピンチでマウンドに向かう時の心境を比嘉に聞くと、「正直開き直ってます」とあっけらかんと答えた。
「まあそう言ったら、ランナーを残したピッチャーはいい気持ちはしないでしょうけど」と苦笑する。
「開き直ると言っても、ただエイヤーと行くわけじゃないですよ。ブルペンではいろんなことを考えます。やっていいこと、やっちゃいけないこと、そこらへんの準備はした上で、マウンドに行ったら開き直る。まあ緊張はしますけど、5分、10分後にはもう何かしらの結果が出てるわけじゃないですか。だから後悔しないようにやるべきことはやって、全力で投げて、それでダメだったら、『そういう日だったんだな』と受け止めたいし、それで二軍行けって言われたら、『わかりました』と行くだけです」
この潔さが度胸満点のピッチングを実現している。
ファームでも若手にとって話しかけやすい存在。
今、一軍投手陣に落ち着きを与えている比嘉は、昨年の手術以降、約10カ月間を過ごしたファームにも置き土産をしていた。
ファームでは、年齢が一回り以上も違う若手投手に、比嘉がアドバイスを与える光景がよく見られた。
「周りが本当に若くて、30代は僕ぐらいだった。でも、年上の選手の中でも僕は(何かを聞きに)きやすいと思うので」と比嘉は笑う。
沖縄の人らしいおおらかな雰囲気を持つ比嘉は、一軍では年下の選手からもいじられるキャラクター。ファームの若手投手にとっても近づきやすい存在のようだ。