パラリンピックへの道BACK NUMBER
絶対王者・国枝慎吾、苦悩の2016年。
復活を確信させる、凄み溢れる逸話。
posted2016/07/24 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
パラリンピック・イヤーの今年、絶対の王者が、試練に直面している。
だが、再び、跳ね返すに違いない。これまでを振り返ればそうも思わせる。
車いすテニスの国枝慎吾である。
これまでにあげてきた実績は、まさに王者と呼ぶにふさわしい。シングルスでは、グランドスラム24回優勝。年間グランドスラムは5回達成。ダブルスではグランドスラムで20回優勝を果たしている。
パラリンピックはアテネ、北京、ロンドンと3度出場し、アテネではダブルスで金メダル、北京はシングルスで金メダル、ダブルスで銅メダル、ロンドンではシングルスで金メダルを獲得。綺羅星のように、タイトルを積み重ねてきた。
「今の自分は絶対的存在ではない」
ただ今年に入ってからは、順調とは呼べない時間を過ごしてきた。全豪オープンでは初戦で敗れ、5月の世界国別選手権では決勝でフランスとあたり、国枝は敗北。日本は準優勝に終わっている。2年連続で年間グランドスラムを達成した2014、2015年とは対照的な1年となっている。
原因は、昨年9月の全米オープンのあとに覚えた右肘の違和感にあった。そのため、今年4月にクリーニング手術を受けたことが影響している。
国別選手権では、「あと3カ月あれば」と、それなりの回復への手ごたえも口にした。だが、6月の全仏オープンで準決勝敗退に終わると、「今の自分は絶対的存在ではなく、絶対的な力がないのも分かっている」とコメント。7月のウィンブルドン選手権も、右肘の状態が万全ではないことから、欠場した。
リオデジャネイロパラリンピックまで、残された時間は決して長くはない中、その足取りは順調とは言えない。国枝自身の言葉も、それを物語っている。むしろ、危機感を抱いていておかしくはない。不安はふくらむ。