野球のぼせもんBACK NUMBER
球速を取り戻して一軍に復帰。
ホークス最年長・五十嵐の探究心。
posted2016/07/05 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Hideki Sugiyama
新記録の4万6776人。
6月27日、東京ドームが1日限定で、ホークスの本拠地に化けた。レプリカユニフォームが無料配布される大人気イベント「鷹の祭典」が地元福岡を飛び出し東京にも進出して5年目を迎えた。毎年満員の大盛況である。今年の一戦は球団主催公式戦の史上最多来場者数を更新する大賑わいだった。
だが、試合の方は終始劣勢だった。先発した武田翔太が初回に先制を許し、3回にはまさかの11球連続ボールなど乱れに乱れて計6失点でKOされた。7回裏終了時点でホークスは2対9と大差をつけられて、お祭り気分のスタンドもさすがに意気消沈していた。
だが、その時だ。1人の男の名前がコールされるとドームの雰囲気が一変した。
21世紀の元祖速球王・五十嵐亮太。
ひときわ大きな歓声を浴びながら8回表のマウンドに向かったのは、背番号53、五十嵐亮太だった。
21世紀の元祖速球王だ。
スワローズ時代に当時日本最速タイの158キロをマークして注目の投手となった。一方で「球界のキムタク」と呼ばれたイケメンぶりでも人気を博した。スワローズで12年間活躍したのちにFA権を行使してアメリカへ。メッツなど3球団でメジャーのマウンドにも上がった。'13年に日本球界に復帰し、選んだ新天地がホークス。それから昨年まで毎年50試合以上に登板している。常勝ホークスを支えるかなりの働きぶりだ。
しかし、今季はあまり名前を聞かなかった。
4月21日、練習のランニング最中に左太もも裏の肉離れを発症。翌日に一軍登録を抹消され、リハビリと二軍暮らしが続いていた。この日が約2カ月ぶりの復帰登板だったのだ。