野球のぼせもんBACK NUMBER
球速を取り戻して一軍に復帰。
ホークス最年長・五十嵐の探究心。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/07/05 07:00
プロ入り当初からリリーフのみで出場し続け、初登板からの連続救援登板数はNPB記録となっている。
外野からの送球がピッチングのヒントに。
今年4月にヤンキースのアーロン・ヒックスが左翼から本塁へ投じた送球が105.5マイル(約170キロ)を計測したと話題になった。それをニュースで見た五十嵐は「なるほど~」と感じることがあった。
「僕が向こうでプレーしていた頃の強肩選手もそうですが、ボールをしっかりと上から強く叩いているんです。外野の場合は助走をつけて目いっぱい投げるから同じようにはできないけど、体の使い方、腕の使い方はヒントになりました」
日本ではリリースポイントはできるだけ「前で」と教えられることが多いが、アメリカでは角度をつけるために「高く」と指導される場合も多い。五十嵐は「上から強く、押し込む」ことを意識してピッチングを再開した。
それでも以前の癖が出たり疲れたりすると腕は下がってしまう。それを修正するのが、得意球であるナックルカーブだという。
「カーブをしっかり曲げるためには腕も体も縦回転を意識しないといけない。そうすれば、自然と腕の位置も高くなる。カーブは緩急をつける武器にもなりますが、自分自身のフォームを修正するのに大切な球種でもあるんです」
「リスクがあっても、リターンのチャンスがあるなら」
常に探求心を忘れない。それが五十嵐という投手だ。
2年前にも、投球の際に左脚を大きく上げたり、クイックモーションを混ぜたりする投球術をシーズン半ばの7月、しかも試合の途中で突如取り入れた。現在もそのスタイルで打者を幻惑している。だが、リスクもあっただろう。投球フォームを変えることで、バランスを崩す可能性も考えられる。
「もちろん失敗しないに越したことはありません。だけど、ある程度のリスクがあったとしても、リターンできるチャンスがあるのならトライすべきだと、僕は思っています。失敗したとしても、次に取り返せばいいんです」
そして先日の東京ドームのマウンド。登板した1球目に151キロをマークして、スタンドをまた大きく沸かせた。6月30日のマリーンズ戦(ヤフオクドーム)では2対1と拮抗した7回2アウト二、三塁の場面で代打・井口資仁から、やはり直球で見逃し三振を奪ってみせた。
抜群な実績にも胡坐をかかず、自分磨きを忘れない。やはり「キムタク」はいつまでも若々しい投球で、ファンを魅了してくれる。