錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
快進撃の端緒となった相手に不戦敗。
ハレ大会優勝のメイヤーと錦織の因縁。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/06/27 07:00
芝の前哨戦となるはずだったゲリー・ウェバー・オープンを脇腹痛により棄権した錦織。ウィンブルドンへ向け、休養十分となった。
期待薄のウィンブルドンでこそ奇跡が起きる!?
受賞の翌年にスランプに陥ってランキングを大きく落としたり、ケガでツアーを離れたりしたケースも多々見られ、錦織も'09年は右肘に故障を抱えてのスタートとなった全豪オープンは1回戦敗退。当時の記者会見のメモを見ると、「去年と違って、最初から強敵がいっぱいいて大変。いきなりケガもしてますし(笑)。大変だけど、すごい楽しいです」と意外と明るく話していたようすがうかがえる。
その年の3月から丸1年ものツアー離脱を強いられることを知っている今となっては胸が痛むが、あの頃私たちは錦織がコートで楽しそうに躍動するのが愉快でしょうがなかった。ケガをしても、周囲の激変に戸惑っても楽しいと思えたのは、10代の若さゆえだろうか。否、今も変わらぬエネルギーの源であるに違いない。
芝は苦手、そしてケガ……客観的に言って今度のウィンブルドンでの期待値はローランギャロスのときのように高くはないだろう。しかしメイヤーが示したように、何が起こるかなんてわからない。'04年以降のニューカマーたちもまだ誰も終わっていない。数々の因縁とストーリーをつなぎ、聖地の戦いが間もなく幕を開ける。