「一生、同じフォームで投げ続けることはできません」

　高校時代、本格派として全国に名を馳せた中崎だが、フォームの変更についてはプライドにしばられていないと笑う。

「一生、同じフォームで投げ続けることはできません。年齢によって腕の角度が変わったり、ボールの勢いも違ってくる。どのフォームが正解だという答えはないと思っています。だから、これからもどんどん進化していこうと思っています。これで完全ではないです。最終的には左バッターを抑えるのはもちろん、右バッターが来ても抑えられるよう極めていきたいですね」

　数日前、テレビで中崎の姿を見た高校時代の友人からラインが来たという。「あまりにも違うフォームになっていて別人かと思った」と書かれていたと笑う。

「驚かれても、笑われても、抑えることができれば、それでいいんです。何より自分自身が投げていて楽しいですから」

　充実感にあふれた表情でそう話した。

数年前までの左腕不足が嘘のような充実ぶり。

　つい数年前までの西武ライオンズは、慢性的な左腕不足という課題を抱えていた。

　しかし、現在は武隈、中崎に加え開幕から安定した働きを続けている小石博孝もブルペンで待機しており、それぞれが持ち場で力を発揮してチームに貢献している。

　先発には菊池雄星、中継ぎから回ったプロ2年目の佐野泰雄もおり、少し前なら想像できないほどバラエティ豊富なサウスポーに支えられている。

　現在は故障で戦線を離脱しているクローザーの高橋朋己が復帰すれば、高いレベルで一軍の左腕枠を争うような、近年では予想できなかったうれしい展開も起こり得るだろう。

「佐野、小石にはワンポイントではなく、右投手と同じ働きを期待しています。そして、中崎には左を徹底的に抑えてほしい。中崎は、今はまだリードされている場面での登板が多いのですが、これからしっかり抑えて、周りの信頼を得たら、いい場面でのセットアッパーとワンポイントになってほしいと考えています」

【次ページ】　後半戦に向けて明るい材料が揃いつつある。