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西武を支える“超安定”武隈祥太と
“画面から消える”中崎雄太の変身。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/13 12:00
2008年ドラフト1位、プロ8年目の中崎雄太。かつてはオーバースローで最速146kmのストレートが武器だったが、今年サイドスローに転向。
変貌を遂げた「画面から消える」中崎雄太。
そしてもう1人、大きな変貌を遂げた投手がいる。プロ入り8年目の中崎雄太だ。
極端なインステップ投法で投球後、一塁側に大きく体が流れるため「テレビの画面から消える投手」として今、プロ野球ファンの間で話題の左腕である。1球、投げるごとにカメラのフレームから外れるせいで、最近では中崎が登板するとカメラが引いて撮影するという逸話もささやかれている。
中崎は宮崎・日南学園高校の出身。2学年下で同じ日南学園出身の弟、翔太は高校卒業後、広島に入団し早くから頭角を現した。中崎も弟同様、高校時代は140キロ後半の速球を武器とする本格派投手だった。
「岸孝之、涌井秀章(現ロッテ)に続く逸材」という高い評価を受けて、ドラフト1位で西武に指名された。
しかし、なかなか芽が出なかった。二軍で試行錯誤する毎日が続いた。
「球界一インステップする選手になろう」
「フォームを変えた回数はプロ入り後の年数を軽く超えますね。現在のフォームに固まったのは今年の3月です。オーバースローのままインステップで投げていたんですけど、それなら左のワンポイントで生き残ることを考えたほうがいいだろう、と。二軍の清川(栄治)ピッチングコーチは左のサイドスローだったので、いろいろアドバイスをしてもらっていました。清川さんから“俺の現役時代よりインステップしてるなぁ”と驚かれて、それならこれをどんどん極めて、球界一インステップする選手になろうと思ったんです」
とはいえ決して奇をてらったわけではない。課題であった制球力を良くしたいという目標から生まれたアイデアだった。
「このフォームになって、いちばん良かったと思うのはコントロールが安定したことです。以前までの僕はとにかくストライクを入れなければという思いが強くて、相手バッターと戦う前に自分と闘っていた感じでした。それが、このフォームになってからは、打者と勝負ができています。次はどんなボールを投げようか、どんな球が有効かと、ピッチングのことを考えるのが楽しいです」