2016年の高橋由伸BACK NUMBER
「男」を捨てて「さん」を選んだ!?
巨人・村田修一にG馬場の面影を見る。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/05/17 11:00
実力、存在感ともに、そのイメージがますます巨人で大きくなっている村田――併殺打でこれほど盛り上がる打者もいないか!?
期待の星が開幕二軍で「一新」は棚上げ……。
そして開幕直前、ニュースが流れた。
「巨人・阿部、岡本が開幕二軍スタート 球団GMが異例の発表」(東スポWeb 3月21日)
《2年目の岡本は三塁のレギュラー奪取を期待されたが、オープン戦打率は1割6分4厘に低迷。苦渋の決断を下した指揮官は、堤GMの発表後に厳しい表情でロッカールームから現れ「総合的に判断した」とコメント。岡本は「結果を出せなかったのは僕の力不足です」と肩を落とした。》
開幕三塁どころか開幕一軍にも残れなかった岡本。ここでは高橋由伸の決断も味わっておきたい。「ちょっと待て、それ、本当に岡本ですか?」と高橋由伸は冷静に判断した。期待の裏返しとも言える(岡本はいま二軍で打ちまくっている。由伸監督の判断は正しかったことになる)。
背水の陣を敷く村田が開幕三塁に滑り込む。
さて面白いのはここからだった。岡本の代わりに開幕三塁に座った村田修一が5月に入って調子をあげてきたのである。村田は去年もレギュラーだったから「岡本の代わりに開幕三塁に座った」という表現はおかしい。でも開幕前を考えるとやっぱりそんな立場だった。
村田は定位置に戻ってきた。しかし控えめな雰囲気。オープン戦でガンガン打ち合い、ハイレベルのレギュラー争いをしようとしたはずが、岡本に負けじと村田もパッとしなかったという理由もあるだろう。でもそれだけだろうか。
『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』(村瀬秀信)という本がある。著者は2013年にこの本を書いたとき、村田のインタビューが抜けていたことを悔やんだ。なので文庫版には「村田修一が見ていた世界」が追記された。昨年の契約更改直後にインタビューは実現したのだが、その日の様子が書かれている。
「人生最大のスランプに見舞われ自ら“キャリアロー”と自虐するしかない絶不調に終わった今季の成績に、報道陣からは『来季ダメなら引退ですか?』という厳しい質問までが飛んだ。村田は口を真一文字に結ぶと『引退しない。あと5年。40歳までは現役を続けたいです』と睨みつける。ピリピリとした時間。悲壮な決意が滲み出る。」
来季ダメなら引退ですか? という記者の言葉には、厳しさというより今の村田なら何を言っても平気だというニュアンスがうかがえる。