2016年の高橋由伸BACK NUMBER
「男」を捨てて「さん」を選んだ!?
巨人・村田修一にG馬場の面影を見る。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/05/17 11:00
実力、存在感ともに、そのイメージがますます巨人で大きくなっている村田――併殺打でこれほど盛り上がる打者もいないか!?
7番で単打を狙う元本塁打王に16文がだぶる。
かつて4番を打っていた男は現在は7番に座り、ホームランを捨てて単打狙いに切り替え、今日も粛々と打席に入る。そんな彼を、多くのファンが「村田さん」と呼ぶようになった。
そこには見守るあたたかさがある。
「ダメなら引退ですか?」というようなピリピリした空気は皆無だ。みんなで村田をかみしめている。
この感じ、どこかで見たぞ……。
思い出した。プロレスラーのジャイアント馬場である。
長らくメインイベントを務めていたジャイアント馬場だったが、'80年代中盤になると、50歳間近でトップに立っている馬場には厳しい目が向けられた。「馬場、引退しろ!」という罵声やヤジが容赦なく飛んだ。
そして「男・村田」は「村田さん」へ──。
そして馬場は決断したのだ。
引退を?
いや、メインイベントから降り、興行の前半や中盤の試合に出場するようになったのである。引退はしなかった。
あれだけ馬場に厳しかったファンはそんな姿をみて「馬場さん」と敬意をもって呼び始めた。馬場さんのプロレスを見守り、すべて受け入れ始めた。
いまの村田修一に対する「村田さん」という呼称は「馬場さん」に近いものを感じる。
記憶と感情が重要なプロレスと違い、野球は数字もハッキリと求められる。そんな世界で馬場さん的な存在感を獲得しつつある村田修一は貴重な選手ではないか。
報じられているものを読む限り、「男・村田」より「村田さん」のほうがつくづく近いと思うのだ。村田修一という実像を楽しむには。
由伸監督もそろそろ「村田さん」と呼んでもいいような気がする。