球道雑記BACK NUMBER
復帰のナバーロ、数字以上の存在感。
ロッテに足りなかった「あと一本」を。
posted2016/05/06 10:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
「今の紙一重ですよね」
その打球を見た千葉ロッテ・田村龍弘が、近くにいた立花義家打撃コーチに話しかけた。
4月29日のQVCマリンフィールド。
今年から田村と同じユニフォームを着ることになった新外国人ヤマイコ・ナバーロの第3打席は、ほんの少しボールの下を叩いた分、レフトを守っていた北海道日本ハム・西川遥輝のグラブに打球がすっぽりと収まった。
相手バッテリーからすれば一瞬、肝を冷やしたシーン。
千葉ロッテのマスクを被る田村の目もベンチでそれを見逃さなかった。
次の第4打席。
ナバーロは、まるで前の打席の打ち直しをするかのようにカウント3‐0からの最初のストライクを鋭く叩くと、打球はあっという間に、センターの谷口雄也の頭上を越えて、ワンバウンドでフェンスに到達した。
KBOリーグ(韓国プロ野球)に在籍した2年間で79本の本塁打を打った実績は伊達ではない。その片鱗を見せつけた。
開幕から4週間、ようやくおとずれた出番。
今年2月、ナバーロは移動中の那覇空港で所持していた拳銃の実弾1発が見つかって現行犯逮捕された。
その後、嫌疑不十分とされ不起訴処分になったが、事態を重く見た球団はパ・リーグ公式戦開幕(3月25日)から4週間の出場停止処分を下していた。
「早く試合に出たかった。この間は僕の中で10年分くらいに感じた」
逮捕から約2カ月が過ぎた4月23日。
ようやく訪れた自身の出番を前にナバーロは、今の想いを口にした。