プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「サー・クラウディオ」の声も!?
レスターを導く“好人物”ラニエリ。
posted2016/04/29 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Plumb Images/Leicester City FC via Getty Images
残るプレミアリーグ3試合で3ポイントを奪えば、クラブ史上初のリーグ優勝が実現するレスター。対戦相手はマンチェスター・ユナイテッド、エバートン、チェルシーと、いずれも格上ではある。しかし、今季の前回対決ではレスターが合わせて7ポイントを奪っている3チーム。降格候補からリーグ王者へという、“シンデレラ・ストーリー”のハッピーエンドは目前だ。
同時に、レスターを率いるクラウディオ・ラニエリも、解任第1号候補から優勝監督への大変身が完了することになる。チェルシーでの前回プレミア監督当時、メディアで「腕の悪い修理工」、「狂った戦術家」、「クビを待つ死刑囚」などと呼ばれ、前任地のギリシャ代表でも早期解任を決めた同国FA(協会)に「最大の監督人事ミス」と言われたイタリア人監督は、今やスポーツ界でも過去最高とまで言われるサクセスストーリーを演出した指揮官として、一般社会レベルで賞讃と敬愛を集めている。イングランドでは「サー・クラウディオ」の誕生を望む声もあるほどだ。
ラニエリがペレやビル・ゲイツと肩を並べる!?
爵位贈呈の可能性が話題となったのは4月半ば。レスターの地元議員が「リーグ優勝となれば、地域レベルではなく、この国のサッカー界全体にインパクトを及ぼす驚異的な功績。英国王室に認定を働きかけたい」と、タブロイド紙に語ったことが発端だった。記者会見で話題を振られた当人は、眼鏡の奥の目をまん丸くしながら「サー・クラウディオ!?」と言って報道陣を笑わせると、「いい響きだが、人をからかうのもほどほどに」という反応。謙虚さで知られる人物らしく、照れ笑いを浮かべながらも真剣には取り合わなかった。
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実際、晴れて王室の認定を受けたとしても、外国人のラニエリが「サー」を名乗ることはできない。国籍が英国でも英連邦でもない人物への爵位は名誉ナイト号に限られてしまう。だが、それでも正真正銘の「名誉」であることに変わりはない。サッカー界で名誉ナイト号を持つ人物と言えば、ペレ。スポーツ界ではボクシングのモハメド・アリへの贈呈を求める動きがあり、経済界に目を移せばビル・ゲイツに贈られている称号だ。
提案者のレスター市議会にはキングパワー・スタジアムの年間指定席を持つ“サポーター議員”もいるようで、ラニエリに各界の偉人と肩を並べる資格が本当にあるかどうかという点には疑問が残るが、ここまでくると、就任自体が「まさか」だったラニエリと、「まさか」の優勝候補に化けたレスターの間には運命さえ感じさせられる。