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「J2のサッカー」は確かに存在する。
セレッソをも変えた鉄の掟とは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/04/26 10:30
J2において、一人で点が取れるストライカーはJ1以上にある意味で価値が高い。柿谷曜一朗はセレッソを再びJ1に押し上げられるか。
J1よりもロースコアな試合が多い?
失点を抑えて手堅く勝ち点を積み上げることこそが、J2でのサバイバル術――。こんな印象を受けるのは、昨季の順位と失点数を見れば明らかだろう。
昨季、平均失点1点以下だったチームは長崎(33失点/6位)、カマタマーレ讃岐(33失点/16位)、ファジアーノ岡山(35失点/11位)、大宮アルディージャ(37失点/1位)、福岡(37失点/3位)、愛媛(39失点/5位)、セレッソ大阪(40失点/4位)、東京ヴェルディ(41失点/8位)と計8チームを数えた。
ちなみに昨季J1で平均失点が「1」を下回ったのはサンフレッチェ広島(30失点/1位)、横浜F・マリノス(32失点/7位)、FC東京(33失点/4位)の3クラブだけ。
大久保嘉人や豊田陽平、宇佐美貴史ら日本を代表する点取り屋や高いコンビネーションで得点を奪う浦和や川崎など攻撃力が高いクラブが多いこともあるが、「J2は『まずは失点しないことを考えるチーム』が多い」と語る指導者もいるように、堅い展開になるのは確かだ。
柿谷の存在が“J2仕様”を完成させたC大阪。
そんな中で今季こそJ1復帰に燃えるC大阪も、昨年以上に“J2仕様”の印象を受ける。昨年は4位でプレーオフに回った末、アビスパ福岡に敗れてJ1復帰を果たせなかった。それだけに、より一層手堅く勝ち星を積み上げようとしている。札幌戦に敗れて町田に首位を明け渡したが、開幕戦から4戦連続で1-0勝利を飾り、8戦無敗で序盤戦を乗り切っていた。
何よりもC大阪の場合は“割り切っても点を取れる”というストロングポイントの存在が大きい。強烈な印象を植えつけたのは、第3節・ザスパクサツ群馬戦でのFW柿谷曜一朗の超絶シュートだろう。0-0のスコアレスで迎えた59分、FWリカルド・サントスのヘディングでの落としを受けると、ゴールに背を向けていた柿谷は意表を突く「ダブルタッチ・ヒールシュート」で膠着状態を打ち破った。
柿谷はその前節・水戸戦でもGKキム・ジンヒョンのロングボールに一発で抜け出してC大阪復帰後初ゴールを決めている。またJ1常連対決となった第7節・清水エスパルス戦では、今季から加入したMF山村和也が82分に右足での豪快なボレーシュートを叩き込むなど、選手の質で勝利を手繰り寄せるシーンが目立っている。