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吉原知子が監督として帰ってきた。
JTを甦らせた流儀はやはり“闘将”。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2016/04/14 10:30
男社会であるバレーボールの指導者界で、吉原知子監督の存在感は際立つ。監督歴1年での昇格は流石としか言いようがない。
時間を経るごとに、減った口出しの数。
着実にステップを上がって臨んだ3月5、6日のV・チャレンジマッチ。吉原監督はタイム中もあまり口を開かず、選手たちが自ら発する言葉に黙ってうなずいていた。
「リーグの最初の頃は口出ししていましたが、試合では選手が自分たちで判断できるようになって欲しかったので、なるべく選手にコミュニケーションを取らせるようにしてきました。選手たちが一歩も引かず、自信満々でプレーできる状態でコートに送り出してあげられたら、私の役割は一つ終わりかなと思っていました」
JTはサーブで攻め続け、得たチャンスをミドルブロッカー陣のブロックや、田中瑞稀らの強打でものにし、2戦連続のストレート勝ち。奥村は「ずっとメンタルが弱いと言われてきたけど、昨日今日はみんなすごく強くなったと感じた」と胸を張った。
「選手は負け続けると負け犬になってしまう」
2試合を通じて一度も表情を崩さなかった指揮官は、2戦目の勝利の後、歓喜に沸く選手の姿を見てようやく笑顔を見せた。
「私が思っていたよりも、堂々と闘えるようになった。入替戦の雰囲気に押されてプレーが小さくなったりせず、自分たちのプレーをいつでもしっかりとできるようになってきている」と選手たちを讃えた。
「選手は負け続けると負け犬になってしまう。私はそれがすごくイヤだった。(チャレンジリーグに)落としたら、自分の力でもう一度プレミアに復帰する、取り返すというのをしっかりやって欲しかった。この昇格がまた自信につながってくれればと思います」
今季の目標はクリアした。しかし、指揮官の安堵の表情はすぐに引き締まった。
「バレーはどんどん進化しているので、世界に置いていかれないように、逆に世界の先端を行けるように、自分自身ももっともっと勉強して、選手たちに伝えていけるようにしたい」
早くも貫禄漂う新米監督は、さらなる高みを見据える。