今年は「速くて硬い。去年とはまったく別物です」。

　あれから1年。オーガスタに戻ってきた松山が「今までで一番緊張した」のは、1年前のあの誓いを自分がどこまで守り、どこまでその成果を出せるかがいよいよ試されることを、意識のどこかで感じたからだろう。

　すでに米ツアー2勝を挙げ、世界ランキングはトップ15位以内まで浮上。実績も経験もあり、今年のマスターズでは優勝候補の一角と目されている。だが、彼が「一番緊張した」理由は、そういうことではない。

「期待があるから、そういう緊張も生まれてくるんだと思う。自分の状態が少しずつ上がってきているので、そこがそういう気持ちにさせているのかな」

　なるほど、彼は「フツーです」と言いながら、実際は「上がってきている」という手ごたえを感じている。

　昨年はグリーンが遅めでスコアが伸びたが、今年は「速くて硬い。去年とはまったく別物」だ。そんな今年のグリーンについて「合いそうな雰囲気はあるか？」と日本メディアから問われた松山は「僕に合うかじゃなくて、僕が合わせなきゃいけない。ここまで速いと下りの嫌な感じはあるけど、そこに付けなければいいだけのこと」と、きっぱり。

　狙った場所に打っていける、付けていけるという自信を抱いているからこそ、そう思うことができる。パットにも好感触を抱いているからこそ、グリーンは相性ではなく「僕が合わせるべき」と言えるのだろう。

　すべてが、いい方向へ向かいつつある。昨年以上のものを携えてオーガスタに戻ってきたのだと言いたい。そんな気持ちが「これまでで一番の緊張」を彼に感じさせている。

　言い換えれば、それはきわめて「いいサイン」だ。

松山から離れ、コースチェックをしていた進藤キャディ。

　もう1つ、別の「いいサイン」を感じたのは、5日の火曜日の昼下がりだった。

　土曜日に9ホール、日曜日に9ホール、月曜日に18ホールを回った松山は、この火曜日は練習ラウンドはせず、練習場とパッティンググリーン、ショートゲーム練習場だけで過ごしていた。

　その途中、進藤大典キャディだけが1人で1番ティへ向かい、歩いてコースチェックを始めた。

　進藤キャディにとって、今年は3度目のマスターズ。そして今年はすでに36ホールを松山とともに回り、コースチェックは万全なのではないかと思える状況だった。

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