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“台湾野球の至宝”張泰山が、
徳島インディゴソックスで見る夢。 

text by

河嶋宗一

河嶋宗一Soichi Kawashima

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photograph byJIRO YAMADA

posted2016/03/29 10:30

“台湾野球の至宝”張泰山が、徳島インディゴソックスで見る夢。<Number Web> photograph by JIRO YAMADA

台湾球界初の2000本安打の記録も持つ張泰山。台湾でのニックネームは「森林王子」。

「1人で100人のファンを呼べる」存在感を。

 また、張の獲得によるビジネス面の好影響も期待される。昨年末に、新球団社長に就任した南啓介氏が就任挨拶で語った言葉がこちらだ。

「私は1人の選手が100人のファンも作れないようでは、この先プロでやっていくには甘いと思います。もし、1人が100人のファンを呼べば観客数は劇的に変わりますし、もし呼べなかったとしても、多くの人たちがアクションを起こすようなプランは作っていきたい」

 こんな球団の姿勢に対し、張は「ぜひ大事にしたい」と共感を示す。事実、徳島インディゴソックスの下にはすでに数多くの台湾企業から「日本とかかわりを持ちたい」と申し込みが来ている。「旅行会社とは、7・8月の夏休みを使ったツアープランを組みたい」(南代表)。徳島の街を、異国で頑張る張泰山を応援するためにやってきた台湾からの観光客が行き交う。そんな日常もそう遠いことではなさそうだ。

張泰山が考える、プロ野球選手のあるべき姿。

 かくして張は4月2日のリーグ開幕へ向け、2月29日に来日。3月2日には練習に合流した。オフの期間、台湾で行った筋力トレーニング中心の練習をベースに、日本では技術面中心の練習に移行。練習場や海陽町で行われていたキャンプでは、早くも快音を響かせている。

 驚かされるのは、終始一貫した真摯かつ気さくな姿。選手たちには自らの培った技術を身振り手振りで教えこみ、時には丸刈りの選手を指差し、「僕と同じ」とトレードマークのちょっと薄くなった頭皮を自らネタにすることも。ファンが近くを通ると必ず笑顔を見せ、サインを拒むことなど一切ない。

 日本での生活を「勉強」と捉え、「統一ライオンズにいた時、若手選手に厳しく優しく接し、ベテランに対してよく話を聞いていただき、チーム全体のバランスをうまくコントロールされていたと思います。そんな中島さんの指導者としてのスタイルを学んでいきたい」と明言している張泰山とはいえ、日本のスター選手では到底考えられない姿勢である。

 では、張泰山にとって「ファン」はどんな存在であるのか。彼は力説する。

「ファンの皆さんは私のことを大事だと思ってくれるからファンであってくれる。同時に技術が上手になることによって、みなさんからも注目を受けることになる。すなわちファンがいることは、実力がある選手ということです」

【次ページ】 「ファンからの指摘も、喜んで聞きます」

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