プロ野球PRESSBACK NUMBER
“台湾野球の至宝”張泰山が、
徳島インディゴソックスで見る夢。
text by
河嶋宗一Soichi Kawashima
photograph byJIRO YAMADA
posted2016/03/29 10:30
台湾球界初の2000本安打の記録も持つ張泰山。台湾でのニックネームは「森林王子」。
「朋友」中島輝士監督に導かれ、徳島へ。
昨年秋、張はプロ野球選手としての岐路に立っていた。統一セブンイレブン・ライオンズとの5年契約が切れ、球団からコーチ打診を受けるも、現役にこだわりたいという思いからこれを固辞。しかし他球団からのオファーはない。そんなある日のこと。彼は統一でかつて指揮官として薫陶を受けた日本人に再会する。社会人・プリンスホテルで活躍し、1988年ソウル五輪では日本代表、日本ハムファイターズでも4番を張った中島輝士である。中島は現在、徳島インディゴソックスの監督を務めている。
その時、張は冗談交じりで中島に話をした。「徳島に行って野球をやりたい」。その場で回答はあった。「いいよ、来なさい」。
さらにこうも言われた。
「家族も一緒に来てください、楽しく野球をやりましょう。すべてのことを私たちに任せて、野球に集中できる環境で楽しくやってください」
楽しく野球をやる。それが張の心をつかんだ。いずれは指導者として活躍するために「台湾とは違う野球文化を見てみたい、自分の視野を広めたい」という思いもあり、2016年1月22日、張泰山の徳島インディゴソックス入団」が決まったのだった。
長打力不足に悩んできた徳島のカンフル剤に。
では、「徳島インディゴソックス」とはどんなチームなのだろうか?
2005年の創設時から四国アイランドリーグに名を連ねた徳島。が、長らく低迷期が続き、一度は運営会社が変更される事態も。が、そんな苦難を超えて2013年に悲願のリーグ総合優勝を果たすと、2014年には島田直也監督(現:横浜DeNAベイスターズ2軍投手コーチ)の下で独立リーグ日本一に輝く。同年は島田監督と共に入野貴大(東北楽天ゴールデンイーグルス)、山本雅士(中日ドラゴンズ)両投手をNPBに送り出すバラ色の年となった。
しかしながら中島監督がコーチから昇格した昨年は前期3位、後期2位。中日ドラゴンズ育成指名の大型右腕・吉田嵩、巨人育成指名の内野手・増田大輝などがディフェンス面で踏ん張りを見せた一方で、68試合15本塁打のチーム本塁打数はリーグ最下位。長打力を有する張泰山のような選手の獲得は不可欠だった。