サムライブルーの原材料BACK NUMBER
小林悠が左手薬指にキスをするまで。
家族とともに歩んだ復活への1年間。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/03/08 10:40
小林悠は何度もチャンスをケガでふいにしてきた。それでも、ハリルホジッチは彼を呼んだ。復活にはまだ遅くない。
ゴール直後、左の薬指に唇を合わせた。
あのゴールの直後、彼は左拳を震わせるようにして握り締めた。そして歓喜の輪が解かれると彼はそっと左の薬指に唇を合わせている。
「ケガをしないってことを強く意識したトレーニングを続けてきたなかで、凄くいいスタートを切れた。去年を考えても、今年は活躍しなきゃいけないっていう気持ちです。ケガなくやれれば、得点を取れる自信はありますし、そうなってくれればいいかなって思っています」
試練の連鎖を断ち切った男はそう言って、力強い目をこちらに目を向けた。
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日本代表候補合宿のメンバーに招集されることが決まり、ホーム開幕戦(3月5日)の湘南ベルマーレ戦では引き分けに終わりながらも2ゴールをマークした。
1点目、大久保嘉人からのラストパスを受け、前に出てきたGKをいなすように浮かしたシュートは蝶が舞うようで、2点目は後方からのパスを反転しながら絶妙なトラップで前を向き、そのまま蹴り込んだミドルシュートは蜂が刺すようだった。
蝶のように、蜂のように。
反撃のストーリー、そのゴングがついに鳴った。