マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
森友哉vs.岡田雅利の配球一本勝負。
西武の紅白戦で見た捕手サバイバル。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/02/29 10:40
岡田雅利(一番右)と森友哉(右から2番目)。和気藹々とした雰囲気の下には真剣勝負の刃が煌いている。
西武の紅白戦で目撃した、ある真剣勝負。
ランチタイムをはさんで、午後が始まる。キャンプ中盤は、ここでグラウンドの雰囲気が一変する。
一軍候補の“A組”をさらに2つに割った紅白戦が始まる。
埼玉西武ライオンズの一軍キャンプは、日南市南郷で行われていた。
宮崎市内から絶景の海岸線を車で1時間走ると、広島東洋カープがキャンプを張る日南の街だ。南郷はさらにそこから国道を30分ほど南に下った、海と山に抱かれた土地にある。
シートノックまではにぎやかでも、試合が始まると一気に緊張がグラウンドを包む。チームメイトではあっても今向き合っているピッチャーは、結果によっては自分の生活を脅かす“敵”になる。
野球の雰囲気じゃない。
マウンドとバッターボックスで、互いに竹刀を構えて向き合う剣道の一戦のよう。守るバックが時折り発する声もどこか遠慮がちに聞こえる。
岡田雅利vs.森友哉。まずは岡田の打席。
3年目の捕手・岡田雅利が打席に入る。その足元でミットを構えるのは、期待の天才バットマン・森友哉だ。
2013ドラフト入団の同期生の2人は、年齢こそ岡田が6つ年上だが、同じ大阪桐蔭高の捕手。高校時は岡田だって、リードオフマンの捕手として甲子園で鳴らしたものだ。
社会人野球・大阪ガスの第一線でじっくり6年腕を磨いてからプロに進み、2年目の昨季、地味ながらも相手打者の読みの逆を突く配球で音もなく台頭してきた捕手だ。
その実力はスタンドで見守るファンにはかわりづらいかもしれないが、同じポジションを守る者にはとても敏感に伝わり、自分の居場所をおびやかす“敵”として、それは不気味なものだろう。
今季再び「捕手」にカムバックする森友哉にとって、先輩・岡田はきわめて微妙な存在に違いない。