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ブンデス最下位クラブでの残留戦線。
清武弘嗣と山口蛍の試行錯誤は実るか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/02/20 10:40
危険なスペースを察知して相手の攻撃を潰す能力は日本屈指。カウンター主体のチームでその長所は生かせるか。
スパイクも含めて、試行錯誤の真っ最中。
今季からハノーファーの10番を背負う清武は、ここまでリーグ戦9試合に出場して、3ゴール、4アシストを記録。その中にはドルトムント戦の決定的なスルーパスなどはそこに含まれていないわけで、攻撃面で数字以上のものをチームにもたらしている。
一方で、山口が置かれた状況は決して楽観できるものではない。山口が加入した時点でチームは最下位に沈み、監督も代わった。現在はリーグ戦で7連敗中だ。そのなかで自らが望むポジションをつかみとり、チームの勝利に貢献することは簡単であるはずはない。
それでも、ドイツに来てから1カ月半の間に、山口は確実に前進している。
2月17日の練習で、山口はあるトライをした。
スタッド(地面に付く突起)に金属の部分があってすべりづらい取り換え式のスパイクではなく、樹脂の固定式のスパイクを履いていたのだ。
固定式の方が足などへの負担も少ないし、ボールタッチの際の繊細な感覚も足に伝わる。しかしヨーロッパの地面は日本それよりもはるかにやわらかいため、踏ん張りがきかず足を滑らせてしまいがちだ。なので日本からやって来たばかりの選手の多くが苦労するし、取り換え式のスパイクを選ぶことも多い。
「今日の午後の練習は軽めだと聞いたので、これを履いただけです。もちろん、(日本よりも)はるかに滑りやすいですけど、来た当初よりもそういうところにも慣れてきましたね」
些細な取り組みに見えるかもしれない。だが、1部リーグへの残留をかけて各チームが必死に戦う残留争いのなかで、勝敗をわけるのはそうしたディティールの部分である。まるで神にでもすがるかのように、復帰した清武に異常なまでの期待をかけざるを得ないのが今のハノーファーだ。道のりは険しい。でも、これから待ち受ける厳しい戦いのなかで、山口の前向きに取り組む姿勢が実を結ぶ可能性は十分にあるのではないだろうか。