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最終日最終組はやはりドキドキする?
岩田寛が「狙えない」と知った瞬間。
posted2016/02/17 10:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
ペブルビーチ・プロアマ最終日を最終組で回り、米ツアー初優勝に迫ったものの、勝利には3打及ばず4位に終わった岩田寛。
その感想を問われると「ああ、4位だな」。ドキドキしたかと問われると「落ち着いてました」。
彼の口をついた言葉だけを単純に拾い上げて綴ってしまえば、岩田は喜怒哀楽も感情の起伏も見せない能面のようなゴルファーだと思われてしまいそう。
しかし、ああ見えて岩田はとても繊細で、ゴルフにも周囲にも細やかな心の目を向けている。そんな彼がサンデーアフタヌーンをラストグループで回りながら、デリケートな心を無表情に保っていたはずはない。
「見ているほうは十分にドキドキしましたよ」
そんな言葉を投げかけてみたら、岩田もようやく呼応し始めた。そして彼はこう言った。
「もっとドキドキしたかった」
その言葉に込められた岩田の想いを振り返る。
11番で首位に並んだ後、岩田のゴルフが崩れた。
「落ち着いてました」と答えた岩田だが、実際は最初から小さなドキドキを感じていたという。
「ショートパットとか、ドキドキはしてました」
前半はティショットでわずかにフェアウエイを外すことはあっても、全体的には安定していた。グリーンを狙うショットも前半はGIR(パーオン率)は77.77%と悪くなかった。バンカーショットのあとの短いパーパットを外した4番だけはボギーを喫したが、それ以外は、安定したゴルフが岩田の心の小さなドキドキをうまく鎮めていたのだと思う。
だが、後半に入ると様子が変わっていった。11番のバーディーで首位に並ぶと、岩田は「もっと取るぞ」と心を高揚させた。しかし高鳴り始めた彼の心に、今度はゴルフのほうが付いてきてはくれなくなった。
「12番からはバーディーが取れるホールが4ホールぐらいあった。でも、そこからは1回もパーオンしてない。もしかしたら(勝てるかも)という気持ちに、今の僕のアイアンショットが付いてこれなかった」
チャンスホールも、すべてパーどまり。「凌ぐことしかできない」悔しさが募っていった。
そして迎えた上がり3ホール。「さあ、どうする?」と自問した岩田は、気持ちを入れ替え、答えを出した。
「さあ、攻めるぞ」
「さあ、行くぞ」
それが、あの日の岩田の心が最高に高揚した瞬間。彼は、そんなふうにドキドキしていた。