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最終日最終組はやはりドキドキする?
岩田寛が「狙えない」と知った瞬間。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/02/17 10:30
1月末の試合では3日目を9位で終えながら4日目に大崩れしたこともある。岩田は着実にアメリカでの戦いを学習している。
はやる気持ちが、飛距離を読み誤らせた。
だが、高揚は落胆へ、攻めは痛恨へと変わっていく結果になった。
首位でホールアウトしていたボーン・テイラーから1打差で迎えた16番。1つ伸ばしたい、バーディーを取りたいという気持ちが彼のドライバーに伝わりすぎたのかもしれない。
「思ったより飛んでしまった。(フェアウエイだったけど)左足下がりで……」
その傾斜で計算が狂い、第2打はグリーン右手前に止まってしまう。難しいチップショットが残り、寄せワンできずにボギーとなった。「どれが悔しい? セカンド?」と尋ねると、岩田は無言で頷いた。あの第2打は痛恨の一打になった。
だが、もっと悔しかったのは最終ホールの18番(パー5)。イーグルを取らない限り、首位に追い付く道はないという状況下、もちろん岩田はイーグルを狙って持てる力を振り絞ろうとしていた。
決めるしかない第3打は、グリーンにも乗らなかった。
ドライバーでフェアウエイを捉え、2打目は3Wで行けるところまで行き、グリーン手前まで運んだ。ピンまで33ヤード。SWでカップに直接入れてしまいたい第3打。入れない限り、勝利への道はない。
しかし、その運命の一打を打った瞬間、ボールは不思議な跳ね方をして、グリーンに乗らず、すぐ目の前に落ちた。18番グリーンを囲む大観衆から「オー……」と溜め息が漏れた。
「えっ? 今の何?」
「マジ? チキン(臆病)?」
そんな嘲笑の声まで聞こえてきたが、上がってナンボのゴルフにおいて、ミスはミス、失敗は失敗、負けは負けだ。
それを百も承知しているからこそ、ホールアウトした岩田は思わず、「情けない。自分の下手さに呆れてる」と言ったのだろう。