スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
中地区の隆盛と着実な補強。
~今季のMLBを占うストーヴ・リーグ~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2016/01/31 10:40
タイガースのジャスティン・アプトンは本塁打と盗塁を両立する珍しいバッターだ。
タイガースも打線の破壊力は十分。
同地区を見渡しても、地力のあるタイガースが着実な補強に成功している。
冒頭でも触れたが、タイガースはアプトンを獲得した。アプトン、イアン・キンズラー、ミゲル・カブレラ、J・D・マルティネス、ヴィクター・マルティネスと並ぶ打線は破壊力十分だ。大半が右打者で大丈夫だろうか、という危惧も脳裡をよぎるが、先発を左投手で固めているホワイトソックスなどは、むしろ対応に苦慮するだろう。
加えてタイガースは、ジョーダン・ジマーマンを先発の一角に加えた。彼とアニバル・サンチェス、そして昨年前半は故障に泣かされたジャスティン・ヴァーランダー(シーズン終盤は復調気配を見せていた)が本来の力を発揮すれば、本命ロイヤルズも安閑としてはいられなくなる。
中地区から3球団がポストシーズンに!?
そんなわけで、去年と同様、今季の大リーグも中地区を中心にまわりそうな予感がする。
ア・リーグ中地区は、いま挙げた両チームに期待がかかるし、眼をナ・リーグに転じても、カブス、パイレーツ、カーディナルスがそろう中地区はペナント獲得に最も近い位置にある。ジョン・ジェイソ(一塁手兼捕手)を獲得したパイレーツは、ロイヤルズとよく似た化学反応を作り出せるチームだし、カブスは、ジェイソン・ヘイワード(中堅手)、ジョン・ラッキー(投手)、ベン・ゾブリスト(主に二塁手)を補強して野球IQを高めた。
「エキサイティングではないが、負けない野球を知っている」と皮肉られるカーディナルスにしても、先発陣の一角にマイク・リークを加えてしぶとさを増した。中地区から3球団がポストシーズンに進出する事態が再現されても、私は驚かないだろう。
とはいうものの、球音はまだ聞こえてこない。春季トレーニングははじまっていないし、ホームグロウンの無名選手が飛躍的に伸びる(こちらのほうがチームは強くなる)ケースもどこから出てくるかわからない。これからの2カ月間は、各球団の準備や予兆をじっくり見ていきたい。