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中地区の隆盛と着実な補強。
~今季のMLBを占うストーヴ・リーグ~
posted2016/01/31 10:40
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
今年のストーヴ・リーグにも、ようやく目鼻がついてきた。FA市場に最後まで残っていた大物ふたりの行く先が決まり、各球団の補強がほぼ終了したからだ。
ふたりの大物とは、ジャスティン・アプトンとヨエニス・セスペデスだ。アプトンは、タイガースと総額1億3275万ドルの6年契約を結んだ。セスペデスは、総額7500万ドルの3年契約で去年も在籍していたメッツでのプレーを選択した。
ひとりセスペデスに限らず、古巣と契約したFA選手がけっこう目立つ。クリス・デイヴィスやマット・ウィータースがオリオールズと、アレックス・ゴードンがロイヤルズと契約したケースも反射的に思い浮かぶ。なかでも拍手で迎えられたのは、ゴードンの「帰還」ではないか。
ロイヤルズ特有の「匂い」を持つゴードン。
昨年ワールドチャンピオンに輝いたロイヤルズは、この冬、主力選手を何人か失っていた。先発の柱ジョニー・クエトがチームを去るのは既成事実と見られていたが、どこでも守れて野球IQのきわめて高いベン・ゾブリストや、中継ぎエースのライアン・マドソンの離脱は大きな損失だった。
ロイヤルズは、クエトの代わりに先発投手イアン・ケネディを獲得した。マドソンの後釜にはホアキン・ソリアを補った。まずまずの補強だが、万全とはいいがたい。とくに近年のケネディは安定感を欠く。フランクリン・モラレスも去った現状を思うと、「最強のブルペン」の呼び名は有名無実に近づく。
そんななかで、ゴードンとの契約は非常に価値が高かった。ロイヤルズの強みは、絶対的なスターが不在でも戦える化学反応をチーム全体で作り出せるところだ。ロレンゾ・ケイン、エリック・ホズマー、マイク・ムスタカスといった主力の顔ぶれを見ても、どこか共通の匂いがある。守備が巧く、つなぎの打撃ができる渋い選手たちなのだ。その仕上げのピースに当たるのがゴードンといってよいだろう。もし彼が他球団と契約していたら、今季のロイヤルズはかなりの苦戦を強いられる可能性が高かった。