プロ野球PRESSBACK NUMBER
粘って粘って強大な敵に立ち向かえ!
日本ハム・中島卓也が醸す野球ロマン。
posted2016/01/02 11:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Nanae Suzuki
Number Web版“プロ野球・ゆく年くる年”企画は、全12球団の短期集中コラムシリーズです。年末年始にかけて、全12球団の2015年の振り返りと2016年の夢を、チームへの思い入れたっぷりの筆致でお伝えいたします!
第9回目は、12球団随一ともいえる若い選手中心のチームとなった北海道日本ハムファイターズです。
振り返れば、2015年はホークスの背中を遠くから仰ぎ見ていたシーズンだった。
開幕からホークスと激しい首位争いを繰り広げていたものの、交流戦明けの6月半ばから瞬く間に水を開けられた。やがてライオンズが失速したことで、2位を独走したままレギュラーシーズンが終わる。
ホークスには全然、勝てなかったなあ……。
そう思いながら念のために対戦成績を調べてみると、負け越してはいるけど9勝15敗。9つも勝っていた! これはちょっとした驚きだった。だが驚いたということは、やはりいつも負かされていたような気になっていたのだろう。
ホークス戦を観るのは、洗面器に張った水にずっと顔をつけているような体験だった。ずっと息苦しいのだ。
やがて打ち出す常勝ホークス打線。
柳田、内川、李大浩、松田、中村……。
役者が次から次へと出てきて、まったく安心できない。野球は確率のスポーツ。これが三巡、四巡すれば、やがてどこかで打ち出すことになる。
テレビやスタジアムで見ているだけでも異様な圧迫感があった。トイレに行く余裕なんてない。ましてや風呂や食事には……。試合後はぐったりして、何もする気が起きないのがホークス戦だったのだ。
いまのホークスは1980年代のライオンズに匹敵する、常勝軍団だろう。
岐阜で過ごした中学時代、勉強をしながらラジオで密かにナイター中継を聞いていたが、ライオンズにはほとんど勝てる気がしなかった。柴田さんや西崎さんがどれだけ踏ん張っても、最後はいつもライオンズが勝つのだ。あのころの記憶が甦る。
だが、それでも私はパ・リーグを、ファイターズを存分に愉しんでいる。「強大な敵に若者たちが立ち向かう」という構図に惹かれるものがあるからだ。