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2015年のキーワードは「急成長」か。
有馬記念で振り返る競馬界の1年。
posted2015/12/28 12:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
今年の競馬界のキーワードは「急成長」だった、ということか。一年の総決算となる第60回有馬記念(12月27日、中山芝2500m、3歳以上GI)を制したのは、吉田隼人が騎乗した、8番人気のゴールドアクター(牡4歳、父スクリーンヒーロー、美浦・中川公成厩舎)だった。今年7月まで条件馬だった馬が「急成長」を遂げ、1000万、準オープン、GIIにつづく4連勝。見事、60代目のグランプリホースとなった。
完勝だった。スタート直後、一度はハナに立って内に入った。他馬を行かせて好位で折り合い、直線、豪快な末脚でライバルたちをねじ伏せた。
1000m通過1分2秒4(推定)というスローな流れが味方したことは事実だが、ペースがさらに遅くなればもっと前に行き、速くなれば下げていただろう。トリッキーだと言われる中山芝2500mも、ゴールドアクターにとっては、いかようにもアジャストできる、イージーな舞台だった。
グランプリ初参戦で初勝利を挙げた中川調教師は、この馬のよさとして、「競馬の上手さ」と「成長力」の2点を挙げる。
吉田はゴールドアクターを「先生」と呼ぶ。
昨年8月、吉田隼人を背に迎え、札幌で500万、1000万と連勝した勢いで菊花賞に臨み、3着。その後、じっくり休ませて成長を促したことが、大きな飛躍につながった。
「上のステージでも競馬ができると思っていました。大きな舞台に、馬が連れて行ってくれるんです」と、デビュー12年目でGI初勝利を挙げた吉田は言う。
「これからも、ぼくが『先生』と呼んでいるこの馬に、いろいろ教わっていきたいです」
共同会見で伏目がちにそう語った吉田は、昨年、知人に対し暴力をふるったとして11月12日から12月11日まで騎乗停止になっていた。
「有馬記念は、お客さんと同じ側から見ていることのほうが多かった。こうなることを夢見てやってきて、本当によかったです。去年は自分自身にアクシデントがありましたが、今年はいい結果を出すことができた。くじけないでやっていればいいこともあるので、またつづけて頑張りたいと思います」
先月末、東京競馬場で他馬に蹴られ、右膝蓋骨の亀裂骨折と診断されたが、騎乗を志願して勝利をもぎとった。