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ようやく現われた“速い”日本人、
佐々木歩夢がマルケスを超える日。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/01/03 10:40
アジア・タレントカップでチャンピオンに輝いた佐々木は、マレーシアGPのプレスカンファレンスでGPライダーたちの祝福を受けた。
“さん”付けは、自分より速いライダーだけ。
いまの若いライダーたちは、先輩後輩というメーカーチームの縦社会の中で育っていないので、年齢に関係なく、ほとんどファーストネームで呼び合うことが多い。それは佐々木も同じで、ライダーでさん付けで呼ぶのは、いまのところモトGPライダーだけである。「どうして?」と聞くと、「いまは、自分より速いと思うので……」と笑った。
佐々木は、海外とビジネスをする両親の下で育ち、中学1年生のときにインターナショナルスクールに通って本格的に英語の勉強を開始した。将来、GPライダーに育って欲しいという両親の英才教育の始まりだが、これが海外の舞台では大きな武器になっている。
言葉の壁に悩むこともなく、スタッフとのコミュニケーションもうまくいく。英語が話せることで、海外のマスコミに取り上げられることも多い。そして、日々、磨きがかかる才能に多くの人が注目している。
人一倍の負けず嫌い。
屈託のない明るい性格でビッグマウスも嫌みがない。そして、何よりも、スポーツ選手にとってもっとも大事な、「人一倍負けず嫌いな性格」を持ち合わせている。
そんな佐々木に将来の夢を語ってもらった。
「ホンダの監督さんに、速い選手はいらない、凄く速い選手が欲しいって言われた。だから、僕は凄く速い選手になります。来年の目標はルーキーズカップとレプソル選手権でチャンピオンを獲って'17年にグランプリに参戦すること。将来の目標は、ロッシやマルケスのようにモトGPでチャンピオンを取ること。マルケスは何歳でモトGPのチャンピオンになったんでしたっけ? 20歳? だったら僕は19歳で獲ります」
彼は、夢ではなく、すべて、目標という言葉で語ってくれた。
佐々木歩夢。その名の通り、日本人の夢に向かって歩いていく選手に成長していくのかも知れない。
実に楽しみな選手である。