プロ野球亭日乗BACK NUMBER
一時代の終焉を迎えた読売巨人軍。
高橋新監督が背負うチーム再生の重圧。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2015/12/31 11:30
現役引退・監督就任セレモニーで「誇れることがあるとするなら、巨人軍で現役生活を全うし、完全燃焼できたことだと思います」とコメントした。
高橋新監督のテーマは優勝よりも再構築か。
そんなチームを引き受けた高橋新監督に、'16年のシーズンはいったい何を期待したらいいのだろうか。
'16年のシーズンに向けた補強の柱は外国人選手と新人というのが現実だ。
メジャー復帰の噂もあったマイルズ・マイコラス投手とアーロン・ポレダ投手を残留させられたのは最大の“補強”だったといえるだろう。ロッテで実績のあるルイス・クルーズ内野手は2016年に来日3年目となり日本の野球にも慣れて期待ができるかもしれない。ただ4番候補のギャレット・ジョーンズ外野手は、まったくの未知数である。これに2016年には3年目となるレスリー・アンダーソン外野手、5年目となるスコット・マシソン投手らが加わって、とにかく投打に外国人選手をやりくりしながら、なんとか1年間を切り抜けようというチーム構成が見えてくる。
逆に言えば、今年の補強を考えれば、高橋監督に課せられた最大のテーマは勝つことではなく(もちろん全力で優勝を目指す戦いができなくても仕方がないというニュアンスだが)、チームを根本的に作り直すことではないかと思っている。
巨人の積極補強は若手育成のためにあった。
勝利と育成という二律背反するテーマを抱えて苦悩するのが、巨人の監督の永遠のテーゼだった。
ただ、この2つのテーゼを遂行していくための方法がないわけではない。
それはきちっとお金を使って戦力補強を行い、その庇護の元で若い選手を育てていくという方法だ。
坂本勇人内野手が台頭してきた'08年はFAで補強したアレックス・ラミレス外野手(現DeNA監督)に小笠原道大内野手(現中日二軍監督)、そして阿部の3人が軸となって、ケガがちでフル出場はできなかったが高橋監督もいた。さらには谷佳知外野手、故木村拓也内野手らががっちりと脇を固める布陣だった。
「補強で打線の軸がしっかりしていたからスランプになっても、打てないことには目をつむって経験を積ませるために坂本を使い続けることができた」
こう語っていたのは原辰徳前監督である。
勝つための軸がしっかりしているから育成のために目を瞑れる。これは今のソフトバンクにも言えることかもしれない。