ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹がパター不振を抜ける日は。
「僕は、しんどいことが多分好き」
posted2015/12/17 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
カップ際をすり抜けるボールを見るや、首を捻る。パターを握りしめ、落胆の色を全身に宿して吐く溜め息はギャラリーのそれよりもずっと大きく、ずしりと重たい。
そんなシーンを今年、何度目にしただろうか。
松山英樹の2015年は「0勝」のまま幕を閉じた。
年をまたぐ形で行われる米ツアーのスケジュールにおいては、本格参戦2年目の'14-'15年シーズン。ランキング15位、日本人史上最高額の賞金375万8619ドルを稼ぎながら0勝。今年10月に開幕した'15-'16年シーズンは現段階で3試合に出場していまだ勝利をあげてはいない。
1月のハワイ・カパルア、2月のアリゾナ・フェニックス……いずれも勝利にあと1打が届かなかった。11月、前年覇者として臨んだ宮崎での日本ツアー・ダンロップフェニックスでも、12月に行われたタイガー・ウッズの招待試合・ヒーローワールドチャレンジでも勝てなかった。突き詰めれば「あのパットさえ入っていれば……」の繰り返し。
松山の年間0勝を生んだ要因の多くは、パッティングの不振にあったというのは過言ではない。
いまも得意クラブの欄にはパターと書かれている。
もともと、松山はこのグリーン上での戦いに非凡なものを見せていた。日本ツアーで賞金王となったプロ1年目の2013年。2m前後のいわゆる「入れ頃、外し頃」の距離を苦にせずにリズムを作り、上位に名前を載せた。スポット参戦した米ツアーでも、勝負強さは健在だった。
日本ツアーの公式ウェブサイトにはいまも、選手紹介ページの得意クラブの欄に「パター」と記されている。「うん。(パットは)もちろん嫌いじゃない。自分にイメージが出ている時は、誰にも負けないくらい入ると思う」というのは、いまも変わらぬ本心だ。
しかし、近年のパット不振を誰よりも痛感するのは、松山本人である。「'13年の最初の頃、3カ月くらいはずっと良い感じで打てていた。その時はいつも『入らなくても仕方がない』という気持ちで、“大崩れしないもの”があった。けれどいまは、それがない」