フットボール“新語録”BACK NUMBER
子供のときの食事でケガは減らせる!
ドイツが取り組む“食事改革”の全貌。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2015/12/13 10:30
ドルトムントのトゥヘル監督は就任早々、チームの食事改善に乗り出した。
試合直後の食事を義務付けたグアルディオラ。
グアルディオラ監督はバルセロナ時代から食事にこだわっていることで知られ、2013年夏にバイエルンの監督に就任すると、試合後すぐに食事を取ることを義務付けた。
試合が終わって約30分が経つと、筋肉タンパク質を合成するアナボリック(同化)が始まる。このときに体内に正しい栄養素がないと、回復が遅れてしまうのだ。『ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう』(東邦出版)によれば、選手用のビュッフェには2種類のスープ、2種類のパスタ、パルメザンチーズ、米料理、サラダ、トマト、肉料理、魚料理、フルーツ、ドイツ風アップルパイが用意されているという。
そして何と言っても、食事改善によって成果を上げているのがドルトムントだ。
前任者のクロップはあまり食事に頓着していなかったが、今季監督に就任したトゥヘルは選手たちの食事を一変させた。
強制すると反発を招くため、選手たちに自覚を促す形で、小麦、バター、砂糖を極力排除し、全粒粉のパスタやパンを口にするようにアドバイス。また体内の炎症を抑える効果があるオメガ3脂肪酸を豊富に含む油(アマニ油やナタネ油)を推奨した。その結果、フンメルスが4kgのダイエットに成功するなど、多くの選手のフィットネスが向上した。
ドルトムントは下部組織、そして親にも。
取り組みはプロだけに留まらない。ドルトムントでは下部組織でも食事を重要テーマに据え、アカデミーの食堂の質を上げるだけでなく、親にも栄養学を学ぶことを求めている。
今年10月、そのコンセプトをさらに広く共有するために、ドルトムントの全面協力の下、アカデミーにおける食事を紹介する本『勝負は皿の上で決まる:最善のフィットネスと最大エネルギーのためのドルトムントの原則』(原題:Entscheidend ist auf'm Teller!: Das BVB-Prinzip fur optimale Fitness und maximale Energie)が出版された。
ドルトムントの育成コーディネーター、リッケンは本の冒頭でこう語った。
「今ドルトムントのアカデミーでは、監督、親、選手が一緒になって、食事のコンセプトを発展させている。育成責任者として、とても誇りに思う。それがこの本を出版する動機になった」