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[平成25年第89回大会優勝] 日本体育大学 「胸に刻まれた1年前の屈辱」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byAFLO
posted2015/12/17 07:00
予選会から勝ち上がったチームの優勝は、箱根駅伝史上2校目の快挙。前年19位からの雪辱を果たした。
「落ちこぼれ」と揶揄された4年生の意地。
強烈な逆風が吹きつける中、日体大の面々は確かな足取りでレースを進め、4区を終えて2位という好位置につけた。続く山上りの5区で、服部が歴史的な快走を見せる。後方から追ってきた早稲田大学とともに先頭の東洋大学を追い、1分49秒差を一気に逆転。2位の早大に2分35秒の差をつけて往路優勝を果たした。
下級生たちが先頭で運んできた襷を、復路では3人の4年生が、いずれも区間2位という素晴らしい走りで大手町へとつないだ。それは主将の座を剥奪され、「落ちこぼれ」と揶揄された4年生の意地の走りだった。
2位の東洋大に5分近い大差をつける圧勝。予選会から勝ち上がったチームの優勝は、箱根駅伝史上2校目の快挙だ。
それは屈辱が生んだ勝利だった。伝統の看板に泥を塗った監督は、結果を出すしかなかった。服部は「3年生が主将をしているから」と言わせないためにも、結果を出さなければならなかった。もちろん、キャプテンを出せなかった4年生も――。
今も合宿所の食堂にかかる襷。
19位の悪夢の後、日体大の合宿所の食堂には途切れた襷が額に入れて飾られ、その横にこう添えられた。
「この思いを忘れるな」
額はいまも食堂に飾られている。
揉めながら勝った中大、無敵の王者を倒した雑草軍団の亜大、前年19位から頂点へ駆け上がった日体大。3校の勝利は、数字だけでは決まらない箱根駅伝の真理を雄弁に物語る。どんなに持ちタイムが良くても、極限の緊張感と過酷な道のりの中で実力を出し切るのは至難の業。箱根駅伝がときに意外な王者を生み出す理由は、そこにある。さて、'16年は……。