「打てるものなら打ってみろ」という気迫。

　工藤監督は、二保のピッチングを率直に「好きだね」と言う。

「たとえカーブでも、『打てるものなら打ってみろ』っていう気迫が伝わってくる。常に逃げないで向かっていく姿勢を持っているし、それが表情にも表れている」

　中継ぎながら6勝。それは競った試合展開での登板が多かったという、いわば信頼の証だ。

　だが、来季はがむしゃらだけで通用しないであろうことは、今季の経験の中で痛感もしていた。

「僕は上半身で思いっきり投げるタイプ。それでは調子の波が大きくなり、本当の信頼を得ることは出来ないと思いました」

　下半身主導の投球フォームに比べると、疲労がたまる時期に誤魔化しが効かない投球フォームの問題。今季終盤にはやはり状態が落ち、そのためCSファイナルや日本シリーズでは登板機会なしに終わった。

上った年俸で、自分ではなく妻と子に……。

　秋季キャンプでは工藤公康監督が考案し、自ら現役時代に実践していたメニューを教えていく「強化指定選手」に選抜された。下半身や体幹の強化を行ないながら、下半身主導の投球フォームを作り上げることを目的とする。今の二保にはこれ以上ないメニューだった。

　このオフは「今まではやっていなかったけど秋のキャンプで投げなかったから」としたうえで、12月中にもブルペンに入る計画があるという。1月は沖縄でレッドソックスの田澤純一らと合同トレーニングを行なう予定だ。

「年俸が上がるということは求められることも高くなる。それに僕自身も欲が出てきました。今年以上の成績を求めるのは当然です」

　プロ入りから比べれば、年俸は10倍以上になった。ただ、「どうにも物欲がなくて……」と苦笑いする。

「自分へのご褒美に時計を買うとか、僕にはそれが分からない。うーん、サプリメントを買うか……。いや、まずは自分のためよりも、嫁と子供のために使いたいと思います（笑）」