野球のぼせもんBACK NUMBER
二保旭、7年目のブレイクで年俸4倍!
飛躍をもたらした工藤監督の言葉。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/12/03 10:40
2008年の育成ドラフト2位で九州国際大学付属高から入団。支配下登録されたのは'12年7月だった。
「ぶっ壊れるまでやれ」
今年2月、主力のA組に抜擢されたキャンプ。
工藤監督と二保のあいだに、1つのやりとりがあった。
実はキャンプ中、二保は足を痛めていた。工藤監督は、選手のコンディションを何より重要視する指導者だ。だが、指揮官には二保の今年に賭ける覚悟がひしひしと伝わってきていた。
だから敢えて、強い言葉を浴びせた。
「ぶっ壊れるまでやれ。オマエもその方が納得できるだろう」
二保も二つ返事で「はい」と返した。そして「ぶっ壊れるまで行きます」と言いきった。
工藤監督は心の中でにやりと笑った。
「痛いから休みたいというのは簡単。だけど、こんな怪我は関係ないという強い気持ちでやっていれば、人間の体はそうそう壊れないもの。おかしいなと思ったとき、気持ちの弱い選手は休むことを優先するが、気持ちの強い選手は、そこを何とかしようと考えます。だから色々な発見もある。その後ギリギリのところで、彼は結果を出し続けた。それは彼自身の成長につながったと思います」
本当に打ちづらいピッチャーとは?
また、工藤監督の目指した「相手の嫌がる野球」に誰より合致したのが、二保の投球スタイルだった。
「一番嫌なピッチャーは?」
工藤監督が、かつて何人かのバッターに訊ねたときに、揃って返ってきたのは意外な答えだったという。
「ピッチャーは大事なのはコントロールだと考える。だけどバッターの見方は違った。『腕を振って投げてくるピッチャーが怖い。コースに必ず来るのはそんなに怖くない』と言う。腕を強く振られる……どこに来るか分からない、ひょっとしたら抜け球が来るかも、だけどバシッと決まることもある、そんなピッチャーがバッターにとっては打ちづらいんだよ。制球力はもちろん大事だよ。だけどピッチャー目線だけの自己満足じゃなくて、相手が嫌がることを理解して野球をやることが、結果的に相手に勝つ野球になる」