濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
映画『007 スペクター』では彼に注目!
敵役のバウティスタは名プロレスラー。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySPECTRE (c) 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
posted2015/11/29 10:40
ボンドと争う“Mr.ヒンクス”ことバウティスタ。WWE王座、タッグ王座などプロレス界の頂点にも立っており、ヒールからベビーフェイスまで幅広く活躍した。
人間としての芯の部分で勝負できる俳優として。
闘いを生業としてきた人間ならではの迫力とリアリティ――。
三池作品の常連でもある俳優のやべきょうすけは、それをこんな言葉で表現した。
「画に入った時に感じるものっていうのが凄いですからね。その人が持ってるバックボーンというか。それは役者では出せないものなんですよね。立ってるだけ、振り向いただけで醸し出せるものがあって」
スクリーンでは、肉体美や格闘技術だけが求められるのではなく、人間としての芯の部分が必要ということだ。実際、「人気レスラー(格闘家)が映画に出演」という話題性だけで終わってしまうパターンも少なくない。ビッグバジェットの主演作でヒットを連発するザ・ロックや、三池崇史、阪本順治という日本を代表する監督に愛されたシーザー武志は稀有な例だろう。
夢は「シェイクスピア作品を舞台で演じること」。
バウティスタも、単なる“レスラー上がり”にとどまるつもりはないようだ。そもそも、話題性だけで007映画の重要な役どころには選ばれるはずがない。
『マッスル・アンド・フィットネス日本版』の記事によると、バウティスタは過去に何度となく出演オファーを断ってきたという。レスラーとしての人気に頼った「安っぽいアクション映画」からの脱却を目指したからだ。そのために、ウェイトトレーニングをやめて大幅な減量を試みたこともある。
究極の目標の1つはシェイクスピア作品を舞台で演じることだというバウティスタ。出世作となったアメリカン・コミック原作の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で、彼はクセ者揃いのヒーローチームの一員を演じている。
『スペクター』では、派手なバトルシーンを演じているものの、その肉体は衣服に隠されたままだ。ことさらに筋肉を見せびらかすことなく、カーチェイスの場面でも表情ひとつで画面に緊張感をもたらす。