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丸山茂樹が引き受けた五輪のコーチ。
「引率役」の葛藤と重みを感じて。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKyodo News

posted2015/09/28 10:30

丸山茂樹が引き受けた五輪のコーチ。「引率役」の葛藤と重みを感じて。<Number Web> photograph by Kyodo News

2年前、丸山茂樹と松山英樹がともに参加した試合でのこと。今度はコーチと選手として五輪に向かうことになるか。

「引率役」という自嘲気味な表現の裏には?

 とはいえ丸山のヘッドコーチ就任は、自然な流れと言えるかもしれない。

 日本人でただひとり米ツアー通算3勝を遂げた46歳は現在、度重なる故障で第一線を退いている。主戦場を日本に戻した2009年の優勝を最後に、'12年末にはシード権を失った。

 ふくらはぎの筋断裂、両膝痛、腰痛……。ここ数年は左手親指付け根に悩みを抱えている。激痛を伴うブロック注射に精通するようになり、医師からは「丸山さんは“ドM”ですね」と言われる。日本ツアーの規定にある「生涯獲得賞金25位以内」の選手を対象とした1年間の特別シードをまだ使用していないのは、1シーズンを戦える状態にないからだ。

 一方で日米での経験、それをもとにした視点、キャラクターが受け、ここ数年はテレビ解説をはじめメディアに引っ張りだこ。海外メジャーの現場を訪れて世界のトレンドを感じながら、同世代にも現役選手が多く、彼らの心情をくみ取って発言できる稀な存在である。

 未知な部分が多く、まずは情報戦が展開を左右しそうなメダル争い。その中で、シゲキ・マルヤマの名前は“名刺”として日本人では随一の力がある。また、ゲームに集中する選手たちのスポークスマンとしてもうってつけ。対外的な役割の重要性は小さくない。

 丸山はヘッドコーチの立場を自ら「引率役」と言った。だが、その自嘲気味な表現は、日本代表への影響もさることながら、自身のキャリアにも強い意味を加えそうである。

同世代の深堀圭一郎にこぼした弱音。

 同世代の深堀圭一郎との間で、今回の一件で内々に話が上がった際にメールでのやり取りがあったという。

「どうしよう。不安だ。責任が重すぎる」

「お前しかいない、絶対にやるべきだ」

深堀は「彼は近代ゴルフを一番近いところで見てきた。研究熱心で情報を集められる能力がある。彼の存在で選手が落ちつけたり、一枚岩になれたりする。世間のゴルフに対する見方も広くなって、みんなが丸山を応援する環境が選手をやりやすくしてくれる」とその好影響を強調する一方で、丸山の奥にある思いを吐露した。

「丸山は『自分はいま、ゴルフ界に対して何もできていない』という寂しさを持っている。まだ年齢的にも実力的にも現役で十分にやれるのに、けがでフィールドに戻れないもどかしさが常にある。自分の“ポジション”が、分かっているようで分かっていないような感覚。もう50歳を越えたシニアであれば違ったかもしれないが、『自分が何者なのか』と迷っている段階にある」

【次ページ】 選手として同世代が活躍する中での立ち位置。

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