Jをめぐる冒険BACK NUMBER
生まれ変わったFC東京の“正念場”。
「万年中位」か、真の強豪となるか。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/09/18 10:40
昨年からスタメンに定着したトップ下の河野広貴は、守備にも開眼して新境地を開いている。
武藤、権田の穴を最小限に留める努力。
クラブの本気度も感じ取れる。
FC東京は、エースだった武藤嘉紀がドイツに旅立つと、すぐにネイサン・バーンズ、サンダサと、ふたりのストライカーを補強。権田修一がオーバートレーニング症候群で戦列から離れると、すぐさまブラダ・アブラモフを獲得した。もちろん、武藤と権田の穴は簡単に埋められるものではないが、可能な限り迅速で、その穴を最小限に留める努力をした。
「外から見た東京の選手たちは眩しかったし、味の素スタジアムも本当にいい場所だなって感じた」
'13年に1年間、期限付き移籍でヴァンフォーレ甲府に所属した羽生は当時、そんな感想を抱いていたという。と同時に、こうも思ったという。
「それなのになぜ、『万年中位』と言われているのか、不思議にも感じた。なんで勝てないのか、何がそうさせているのかって」
「万年中位」を卒業したいと本気で願うこと。
その答えが今は、明確になっている。
「以前は内容にこだわりすぎて、表面的なプレーばかりになって、最後の最後で追いつかれたり、負けたりすることがあった。いや、昔を否定するつもりはなくて、勝負強さを身につけるために今、負けないサッカーをしているのは悪いことじゃない。
今やっているサッカーをモノにし、勝負強さがチームに根付いたとき、もう一度ポゼッションサッカーにトライする。そのときこそ、内容も結果も伴うサッカーができるんじゃないか、それがFC東京の理想の姿なんじゃないかって」
だからこそ、勝負にこだわりながら何も勝ち取れなかった場合、どうなってしまうのか、という危機感もある。
「おそらくみんなも同じことを感じているから、必死になって戦っている。これまで『万年中位』と言われてきたけど、それをみんながどれだけ嫌がれるか。『万年中位』からいい加減卒業したいんだ、って本気で思えたら、タイトルがつかめるはず。その覚悟が今季、問われていると思います」