野球善哉BACK NUMBER
100周年の優勝投手・小笠原慎之介。
「今まで野球は楽しくなかったけど」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/20 19:40
先発して161球を投げ抜き完投した小笠原と捕手の長倉。門馬監督も「(小笠原の本塁打は)私も驚きました」と手放しで喜びを表現していた。
「最後は悔いを残したくなかったので――」
門馬監督は試合後、小笠原をねぎらいこんなコメントをしている。
「最後、彼にどのような言葉を残したのか、細かくは覚えていないのですが……全力で行けと言ったのだと思います。今日に関しては何も言うことはありません。小笠原が反省するところは何もありません」
自ら欲を捨て我慢を続けたことで、最後の最後になってたどり着いた到達点。チームメイトと同じように勝利に徹する中で、自分の「個」をいかに出していくかを見つけた。
「最後は悔いを残したくなかったので、全力で行きました。今まで野球をやってきて楽しくなかったけど、今日は楽しかったです。優勝の瞬間は、本当にうれしかったです。うれしすぎて涙が出ません。優勝投手になれたことは、死ぬまで忘れられません」
100周年大会の優勝投手・小笠原慎之介は、そういって、白い歯を見せた。