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<プロレス取材51年の記者が語る>
門馬忠雄「変わりゆく新日の匂い」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTadao Monma
posted2015/08/15 10:30
中西学が2009年、初めてIWGPヘビー級王者に輝いた頃の記念の1枚。バルセロナ五輪にも出場した逸材だが、生粋の新日育ちでは史上最年長での戴冠だった。
真壁刀義には昔のプロレスラーの匂いを感じるよ。
でも、いいこともあるよ。棚橋弘至の「愛してま~す!」、やっぱりクサいけど、これは猪木の「1、2、3、ダーッ!」につながっていて、何よりお客さんが喜んでる。それが一番。理屈じゃない。'00年代にどん底を経験した新日が、今こうしてたくさんのお客さんを集めるようになったのは、棚橋の貢献が一番大きい。もちろん棚橋だけじゃなくて、中邑真輔とオカダ・カズチカ、それぞれ違う個性を持ったレスラーが、3トップとしてファンの選択肢になっているのも大きい。真壁刀義もいい。あいつには昔のプロレスラーの匂いを感じるよ。長州門下の叩き上げで、言葉も理屈に合ってるしね。とにかくプロレスはメインイベント至上主義のボクシングとは違って、松竹の女優や東映映画みたいにオールスター・キャストじゃなきゃ。前座だって、小沢正志(キラー・カーン)とリトル浜田(グラン浜田)の「大小対決」なんて大人気だったもの。あれ、最高に面白かった。浜田が小沢の股をくぐって、小沢があたふたしてね。
中邑のクネクネ、デカくてイケメンのオカダもいい。
中邑は、あのクネクネがいい。関節が柔らかくて筋肉の質がいいんだ。青学大のレスリング部で基礎をやってたからこそのクネクネ。最初は格闘技路線で地味だったけど、ここまでキャラクターを変えて成功したレスラーは、初めてじゃないかな。
オカダは、僕の奥さんが大好きなんだ。「あの子は使えるわ!」ってね。でも、結局は「顔」だよ。イケメンだもん。ドラゴンゲートが頑張ってるのは、そこだもん。それにオカダは191cmと身長もある。やっぱり「大きい」ってのは、プロレスラーにとって大切なこと。一般人と同じじゃダメなんだ。亡くなった阿修羅・原は183cmだけど「酒も女もいらない。あと4、5cm身長がほしい」ってよく言ってた。あれ、スタン・ハンセンのウェスタン・ラリアットがちょうど喉元に入る高さなんだよね。あいつはその痛さを学んで、前傾姿勢のヒットマン・ラリアットを覚えたんだ。