リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
バレロンがリーガ1部に帰ってくる!
古巣ラスパルマスを昇格させた英雄。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2015/06/24 16:30
アトレティコ・マドリーやデポルティーボで華々しいキャリアを送ったフアン・カルロス・バレロンのキャリアは、ラスパルマスで始まったのだ。
ラミーレス会長「これで安心して死ねる」
しかし今季は最後に笑う側に回った。
第1レグの3-1の敗北を、ホームゲームとなった第2レグの2-0で引っ繰り返したのだ。
試合終了直後、マイクを向けられたラミーレス会長は今回の昇格を「去年のコルドバ戦後、泣きながら家路に着いたファン」と「あのときここにいたけれど、もうこの世にはいないファン」に捧げ、「7200万ユーロ(約100億円)の債務を抱えた2部Bのクラブを満員のスタジアムと1部に戻すことができた。これで安心して死ねる」と口にしていた。
それはともかく、今季のラスパルマスは序盤から好調で、最終的な順位こそ4位だったけれど、42節中22節で首位に立っている。
キーマンはストライカーのセルヒオ・アラウホ。ボカ・ジュニアーズからローンでやって来た彼は、バルサBに所属した'12-'13シーズン以来のリーガ2部で得点ランキング2位に入る活躍を見せ、くだんのプレイオフ第2レグでも1部行きを決めるゴールを蹴り込んだ。
カタールからのオファーを蹴って帰ってきたバレロン。
が、MVPは別にいる。
背番号21を付ける齢40歳の元スペイン代表、フアン・カルロス・バレロンだ。
2000年に入団したデポルティーボで国王杯優勝、スペイン代表選出と日韓W杯出場、数度の靱帯損傷、2部降格と1部昇格を経験したバレロンは'13年夏、カタールから届いた好条件のオファーを尻目に、自身のキャリアの原点であったラスパルマスへ戻った。
古巣を「再び1部に上げるため」に。
そして豊富な経験と変わらぬセンスと圧倒的な技術をもって年下のチームメイトを先導し、1年目からクラブを1部復帰への道に乗せ、今季見事に目標を達成したわけだ。
サラゴサとの最終決戦はベンチで見守った彼だが、勝利が決まると「ファンを喜ばせることができた」ことを監督パコ・エレーラと抱き合って喜んでいた。
さて、こうなると気になるのが来季のバレロンだ。
ラスパルマスでリーガ最年長選手としてピッチに立つのか。
それとも「役目は果たしたから」と引退してしまうのか。
問われたラミーレス会長は明言してくれた。
「バレロンは来年もラスパルマスでプレイする。1部でやってくれる。スペイン全国のスタジアムを廻って、ファンにさよならを言うために」