F1ピットストップBACK NUMBER
ドライバーの技術か、最先端技術か。
F1がエキサイティングじゃない理由。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2015/05/31 11:00
独走でトップチェッカーのはずが、まさかの3位に甘んじたハミルトン。優勝した同僚ロズベルクにとっては、まさに棚ボタのモナコ3連覇となった。
ハミルトンがモナコで負けたのは、GPS過信?
直近のモナコGP決勝レースでも、現在のF1を象徴するような出来事が起きた。
それはレース終盤にセーフティーカーが導入された際、メルセデスAMGのピットがトップを走行していたルイス・ハミルトンにピットインを命じたことである。
だが、ハミルトンはこのピットインで3番手に後退。レース再開後、失ったポジションの奪回を目指したが、抜きどころがない市街地コースのモナコでオーバーテイクすることはできず、結局3位に終わった。
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そもそもピットストップでタイヤ交換を望んだのはハミルトンだったが、なぜチームはそれを拒まなかったのか。
レース後に焦点となった疑問に対し、メルセデスAMGのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター)はこう答えた。
「われわれのストラテジスト(戦略家)が計算ミスをした。通常われわれはGPSデータを活用して、前後のマシンとのタイム差をリアルタイムに受信できるのだが、モナコはビルに囲まれ、一部トンネルもあり、GPSデータが完全ではなかった」
GPSデータは、いまではスマートフォンにも活用されている身近な存在であり、それ自体の活用を否定はしない。
しかし、私たちが見たいF1は、コース上でのドライバー同士の戦いであって、GPSによって管理された世界ではない。
「F1は、技術とドライバーの能力の適切なバランスをとる必要がある」という問いに、私は無条件に「賛成」のラジオボタンをクリックした。