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錦織圭、勝負の綾はブーイング?
“ノーシードで最も危険な男”に勝利。
posted2015/05/28 11:20
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Tomoki Momozono
錦織圭が順当に全仏オープン3回戦に進出した。5月27日の2回戦で世界ランキング40位のトマス・ベルッシに7-5、6-4、6-4。第1セットは押され気味だったが最後にひっくり返した。第2、第3セットはともに序盤に大差をつけ、セット終盤にブレークバックを許したものの、余裕を持って逃げ切った。
ただ、全体的には「辛勝」と言うべきだろう。
開幕前にドローが発表になると、準々決勝まではBIG4と当たる可能性がないことから、錦織には有利な組み合わせとの見方が優勢だった。確かに、ノバク・ジョコビッチともラファエル・ナダルとも決勝まで当たらないのは、悪くないドローだ。
しかしこのベルッシをはじめ、地元フランスのポールアンリ・マチュー、第11シードのフェリシアノ・ロペス(既に1回戦敗退)、第19シードのロベルト・バウティスタ(同じく2回戦敗退)ら、錦織の山にはクレーコートでは怖い顔ぶれが並んでいた。
ノーシードの中では、最も危険な選手の1人。
ベルッシは、前哨戦のローマの3回戦でジョコビッチから第1セットを奪い、世界ランク1位に冷や汗をかかせた。翌週のジュネーブでは優勝。勢いに乗ってローランギャロスに乗り込んだ。
今大会のノーシードの中では、最も危険な選手の1人と言える。ノーシードにこういう選手がいるのが、今の男子テニスの厚みであり、楽な組み合わせなどありえないのだ。
第1セットのベルッシはストロークのボールがよく伸び、挑戦者らしく躊躇なく強打をたたき込んだ。錦織のラケットの振りも鋭かったが、ベースラインの内側に入って決定打を放つ場面は少なく、後方で打ち合う場面が続いた。
「途中まではサービスキープに必死だった。お互い、プレッシャーがかかりながらのサービスゲームだった」
そう錦織は打ち明けた。リターンゲームでもブレークポイントを握るところまではいくものの、あと1本が取れない。サービスゲームに神経を使いすぎて、相手のサーブを破るところまで集中力が持続しないのだ。相手のサウスポーから繰り出されるサーブ独特の跳ね方にもうまく対応できていなかった。
押し込んでも、土俵際で押し返される。あとひと押しする精神力が絞り出せない。フラストレーションだけが溜まっていった。